緊張しない寺地拳四朗が抱えた重圧 2200人に「もっと王者らしくなる」と誓った涙のV8
残ったチャンピオンベルトを握りしめて宣言「もっと強く」
ゴングとゴングの間だけは、リング外のことは関係ない。2回。フック気味の右カウンターが挑戦者の顔面を打ち抜いた。ダウンを先取。引退覚悟の相手に圧力をかけられたが、ジャブや巧みなコンビネーションで的確にパンチを当て続けた。本来の打たせずに打つスタイルも随所に復活。終わってみれば3-0の完勝だ。
【特集】“欽ちゃん球団監督”片岡安祐美の今 2度の流産を経て母に…思春期の後悔「生理に見て見ぬふりを」
(W-ANS ACADEMYへ)
「負けたら人生終わり。とりあえず負けられない気持ちでした」
追い詰められた心境を告白した試合後の会見。リングで見せた涙の理由を問われると「なんかいろいろ不安とかあったんだなって……うぅ~」と声を上げてまた涙。大きなタオルに顔をうずめた。「リング上で泣くとか思ったこともなかった。本当に楽しかったし、応援してもらえたし、試合が終わってこんなふうに思ったことがなかったので、それだけボクシングを好きになれたのかなと思います」。一度の過ちで多くを学んだ。
信頼、時間、いろいろなものを失った。それでも首の皮一枚で残ったのはチャンピオンベルト。WBCの緑色はひと味違う。日本記録V13更新の夢は変わらない。その過程には4団体統一もある。肩にかけたベルトを握りしめ、リングから2200人の観衆に誓った。
「変わらず応援してくれた方がたくさんいた。これからはもっとチャンピオンらしく、もっと強く。まだまだ強くなれると思うので、もっとボクシングを大好きになって、強い姿を見せていきます」
「世界王者・寺地拳四朗」のボクサー人生は続く。
(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)