「とにかくアメフトがしたい」 残された日大選手の苦悩、悪質タックルからの2年半
アメリカンフットボールの関東大学1部上位リーグ(L)「TOP8」は29日、都内のアミノバイタルフィールドで優勝決定戦が行われ、悪質反則問題から復帰した日大が桜美林大を38-14で下し、3年ぶり35度目の甲子園ボウル(12月13日、甲子園球場)出場を決めた。甲子園ボウルでは関学大と対戦。騒動時は1、2年生だった選手たちは涙ながらに苦しかった日々の胸中を明かし、下部リーグ(L)を戦った昨年度の4年生に託された夢を実現させた。
日大が騒動後初の甲子園ボウル決定、「あの事件」から関学大とライバル対決へ
アメリカンフットボールの関東大学1部上位リーグ(L)「TOP8」は29日、都内のアミノバイタルフィールドで優勝決定戦が行われ、悪質反則問題から復帰した日大が桜美林大を38-14で下し、3年ぶり35度目の甲子園ボウル(12月13日、甲子園球場)出場を決めた。甲子園ボウルでは関学大と対戦。騒動時は1、2年生だった選手たちは涙ながらに苦しかった日々の胸中を明かし、下部リーグ(L)を戦った昨年度の4年生に託された夢を実現させた。
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やっと、やっと甲子園ボウルにたどり着いた。試合後、日大選手たちはグラウンドに感謝の思いを込めて一礼。主将のDL伊東慧太は負傷で出られなかったが、声を張り上げてチームを鼓舞した。「他の4年生がチームを引っ張ってくれた。僕が特別苦労したことはない。チームのみんなに支えられた」。試合中に冷静さを失わないようにするため、派手なガッツポーズは封印。「僕らの知っているフェニックス(チーム名)は一喜一憂しない」。憧れていた日大の姿を取り戻す戦いだった。
道のりは長かった。2018年5月6日、関学大との定期戦。当時3年生のディフェンスライン選手による悪質タックルが起きた。指示をしたとされる当時の監督とコーチは関東学生アメフト連盟から除名処分を受け、チームも同年度の公式戦出場停止に。数か月間グラウンドを使用できず、練習もままならない。そんな中で新監督に就任した立命大OBの橋詰功氏は「フェニックスというチームを預かって甲子園ボウルに行くのは義務」と使命感を胸に渦中の選手たちを指導した。
出場停止処分が明けた昨年度、戦いの場は自動降格した1部下位L。レベルの差もある。甲子園ボウルに挑戦することもできない。日本一の夢を抱いて入学した昨年度の4年生。それでも、下を向かなかった。後輩たちに夢を繋ぐためだ。決して戦う姿勢を崩すことなく、7戦全勝で1部上位L復帰を決めた。
甲子園ボウルへ最短距離を歩んだ日大。伊東は涙を流しながら言葉を並べた。「先輩たちは日本一を目指せない中でも下の代に繋げるためにやってくれた」。エースQBの林大希も「去年の4年生はゼロから始める姿を見せてくれた。下部でやるのはモチベーションでも難しい面があると思うけど、そんなことも感じさせない姿勢だった」と背中を見て育った。この日、先輩たちはスタンドから観戦。託された夢の続きを届けた。
上位Lに戻り、甲子園ボウルに再挑戦した今年。新型コロナウイルスという壁にもぶつかった。またも練習できない期間が続く。それでも、主将を中心にミーティングを重ね、SNS上でのやり取りを絶やさなかった。全員でできることを考え、「腕立てチャレンジ」としてチーム合計の目標数を設定。その数は数万回にも上る。主将は言う。
「会えなくても活動しようと考えてインスタグラムで交流したり、チームの繋がりを持とうとやってきた。『〇万回チャレンジ』としてやったことは、何個もやってきたうちの一つです」
チャレンジにはスタッフも、女子マネージャーも、橋詰監督までも参加した。下手な上下関係はない。目標数を突破し、100人を超える部員が一体となった。