“国内最速”一山麻緒の育て方 60歳ワコール監督が考える、イマドキ22歳との関係性
ファッションもグルメも「それはそれで彼女の良さ」
22歳の一山は、ファッションもグルメも興味がある今どきの女性。「60歳、還暦を迎えた“オヤジ”としては、やっぱり違いがあるわけですよ」と話す通り、ウエートが増えないように注意したり、合宿に参加する際の服装も気になることがあったという。しかし、「彼女の好きなもので『えっ』というものも、それはそれで彼女の良さだということ。ピアスはだめだ、ネイルはだめだ、とかありますけど、彼女が競技に対して集中できる環境がそういうものであるならば」と広い心で受け止めるようになった。
今では、海外で選手やスタッフとブランチを楽しむ時間も設けるようになったという。競技に集中できる環境の提供に徹底した結果、このレースの戦略については「私の言ってることと彼女(一山)がこうしたいということが、ほぼほぼ一致していた」というほど、コミュニケーションが深まっていた。28.9キロで「行けよ! 行けよ!」と指示を受けた一山は、30キロ過ぎから独走。五輪切符をつかむどころか、日本人歴代4位のタイムで期待に応えてくれた。
だからと言って、甘やかすわけではない。これまでも、30キロからの強さを身に着けるため、5キロ×8本など厳しい練習を課す。昨年の1.2倍程度の強度の練習を用意し、「鬼鬼メニュー」などと言いながらも、一山は手を抜くことなくついてきてくれた。「鬼と言われようと何と言われようとやるしかないと思っている。私たちだけではなく、日本女子陸上界の悲願に届くよう、自分自身がもう一段界スキルアップするしかないと思っている」。4年前の約束は果たした。今度は教え子からメダルを見せてもらうため、二人三脚で戦いに臨む。
(THE ANSWER編集部・宮内 宏哉 / Hiroya Miyauchi)