テコンドー、鈴木兄弟が揃って五輪切符「こんな日が来るなんて信じられない」
母の母国ボリビアからやって来たハーフの兄弟が、そろって激戦を勝ち抜き、五輪切符を勝ち取った。テコンドーの東京五輪日本代表最終選考会が9日に岐阜県羽島市の桑原学園で行われ、男子58キロ級の鈴木セルヒオ(東京書籍)と男子68キロ級の鈴木リカルド(大東文化大)が、兄弟でそろって優勝し、東京五輪の代表に内定した。兄のセルヒオは「100%勝つという気持ちではいたけど、弟と2人でこうして(代表選手決定戦を)勝てる日が来るなんて、信じられない。感無量。嬉しい。幸せな気持ちでいっぱい」と喜びを噛み締め、弟のリカルドも「とにかく嬉しい。兄を追いかけて日本に来たし、強くなれたのは兄のおかげ。感謝しかない」と笑顔を見せた。
ボリビアとのハーフ、セルヒオ&リカルドの兄弟がそろって東京五輪内定
母の母国ボリビアからやって来たハーフの兄弟が、そろって激戦を勝ち抜き、五輪切符を勝ち取った。テコンドーの東京五輪日本代表最終選考会が9日に岐阜県羽島市の桑原学園で行われ、男子58キロ級の鈴木セルヒオ(東京書籍)と男子68キロ級の鈴木リカルド(大東文化大)が、兄弟でそろって優勝し、東京五輪の代表に内定した。兄のセルヒオは「100%勝つという気持ちではいたけど、弟と2人でこうして(代表選手決定戦を)勝てる日が来るなんて、信じられない。感無量。嬉しい。幸せな気持ちでいっぱい」と喜びを噛み締め、弟のリカルドも「とにかく嬉しい。兄を追いかけて日本に来たし、強くなれたのは兄のおかげ。感謝しかない」と笑顔を見せた。
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男子の2階級を制したのは、はるばる南米ボリビアからやって来た兄弟だった。2人とも、日本人の父と、ボリビア人の母を持つハーフ。兄のセルヒオは日本生まれだが、5歳から家族とともにボリビアに移住。当地で競技を始めた。テコンドーの本場・韓国の漢城高校を経て、日本の大東文化大に進み、国際色豊かなキャリアの中で力をつけてきた。映像分析も得意でセンスを感じさせる戦い方を見せる。2018年にインドネシアのジャカルタで行われたアジア大会で銅メダルを獲得するなど、国際大会でも成績を出している実力派だ。右肩の負傷により長く戦列を離れた後の復帰戦で不安もあったが、この日の予選では、準決勝で前田秀隆(大東文化大)との試合を延長戦の末に下す薄氷の勝利もあったが、鋭さのある左の中段の蹴りを武器に3試合を勝ち抜いた。
勝った直後が、弟の試合だった。マウスピースを付けたままだったが「待ってるぞ!」と声をかけた。そして、弟が続いた。こちらも兄同様、準決勝は大接戦で延長戦の末に昨年2月の全日本選手権でこの階級を制した本間政丞(ダイテックス)を破る粘り強さで勝ち上がり、先に優勝を決めた兄からのエールを受けた決勝戦では、1ポイント差の大接戦を逃げ切った。リカルドは、兄を追って2017年12月に来日。技術では兄に劣るが、恵まれた体躯を誇り、力強い右の前蹴りで相手との距離を制する。兄のセルヒオは「僕より才能があり、鈴木家の中でも怪獣みたいな扱い。身体能力がすごい。身体の強さやバネがすごい。でも、背中を押すというか、ケツをたたかないとやらない子なので、オレについてこいって感じです」と見事に後に続いた弟を評した。
テコンドー界は、昨年の秋以降、強化方針をめぐって全日本テコンドー協会強化部と選手の対立が表面化し、協会の内紛に発展。理事が総辞職する事態となり、新体制が動き始めたばかりの状況だ。しかし、五輪は待ってはくれない。この日の最終選考で男子の鈴木兄弟に加え、女子は49キロ級で山田美諭(城北信用金庫)、57キロ級で濱田真由(ミキハウス)が優勝し、計4人が内定選手となった。選手の思いは、結果で示す覚悟のみ。兄のセルヒオが「ここは、通過点。五輪では必ず2人で金メダルを取って、テコンドーを盛り上げます」と宣言すれば、弟のリカルドも「日本が盛り上がれる試合をしたい」と大舞台でも兄弟そろって活躍することを誓った。
(平野 貴也 / Takaya Hirano)