TJ手術2度、両膝の靭帯負傷…ドジャース37歳投手から日本の球児へ「競技を愛するなら頑張るんだ」
マウンドに立ち続ける理由とは
パドレスを経て22年シーズン前にドジャースに移籍。25試合で防御率2.22をマークしたものの、試合中に左膝前十字靭帯を断裂した。翌年復帰したが、3試合目に今度は右膝靭帯を損傷。早々とシーズンを終え、両膝に不安を抱えた36歳でフリーエージェントとなった。
「2度目のTJ手術から膝の靭帯断裂まで10年間くらいあった。その分、体も老いているわけで、リハビリでも25歳の時のように体は反応してくれなかった。痛みが残っていた中で無理に出場したことで、逆の膝も傷めてしまったんだ」
今季はマイナー契約でドジャースに復帰。春季キャンプの好パフォーマンスで開幕ロースター入りを掴んだ。なぜ、過酷なリハビリと向き合い、復帰ができたのか。
「競争が好きだし、野球が好きなんだ」
淀みなく、シンプルな答えが返ってきた。しかし、引退後も人生は続く。年齢を重ねれば、古傷は日常生活に支障をきたす場合もある。それでも、マウンドに立ち続けるハドソンの目標は「またワールドシリーズを制覇すること」。強い決意の裏には、ドジャースへの恩返しの気持ちがあった。
「怪我がありながらも、この球団は僕と家族に良くしてくれた。復帰を決断した時もチャンスをくれたから、それに報いたいんだ。健康なシーズンを過ごしてプレーオフに進出し、ワールドシリーズ制覇が究極の目標だね」
しっかりとこちらの目を見つめ、落ち着いた口調で明かしてくれた。酸いも甘いも、自らの身をもって体験してきた野球人生。今、怪我に悩む日本の球児たちへ、こんなアドバイスを送ってくれた。
「怪我しても続けたいほどその競技を愛しているのであれば、頑張り抜くことだ。怪我を克服した先で振り返ると、苦労した時間に感謝することもできると思うよ」
こんなに説得力のある言葉はない。取材の感謝を伝えると、椅子に座りながらシューズの靴紐を締めた。ドジャーブルーの帽子を被った不屈の中継ぎ右腕。大谷翔平も夢見るワールドシリーズ制覇へ、この日も颯爽とグラウンドへと向かって行った。
(THE ANSWER編集部・土屋 一平 / Ippei Tsuchiya)