ひとり親家庭の子どもたちに「きっかけ」を ラグビー選手が乗り出す不平等是正
ラグビーと出会って人生が一変 「自分だけ幸せ」だけで終わりにしていいのか…
2022年5月に現役を引退し、社業に専念することになった。経済的にも安定した生活ではあったが、何か違和感のようなものが拭いきれない。モヤモヤした思いが胸につかえていた昨夏、中部大ラグビー部の長江有祐監督に誘われて、大学生にラグビーを教える機会を得た。「教えるのが楽しいのか、プレーするのが楽しいのか。いずれにせよ、ラグビーって楽しいなって」。ラグビーの魅力に後ろ髪を引かれた。
本当にやりたいことは何なのか、自問自答を繰り返していたある日、元チームメートで現在は東京サントリーサンゴリアスでプレーする木村貴大選手からA-MAPを紹介された。1期生だった木村選手もまた、A-MAPを通じて自分の思いや価値を社会貢献に繋げる方法を学んだ一人。昨年はクラウドファンディングを通じて絵本を制作し、病院で闘病する子どもたちに配付した。
「ホームページを見ると内容は面白そうだし、まさに自分のようにモヤモヤしている人のきっかけになりそうだった。最初は少し怪しそうだと思ったんですけど、選手会でお世話になっていた廣瀬俊朗さんが専務理事だということで安心しました(笑)」
その後、代表理事を務める山内貴雄さんと話をする機会を持ち、受講を決意した。同じ頃、かつての仲間から舞い込んできたのが、リーグワン参入を目指すCF山梨で現役復帰しないかという誘いだった。引退から1年半が経過していたが、ラグビーの魅力を再認識した直後だったことにも背中を押されてチームに加入。チーム運営にも携わりたい思いにも駆られ、10月に豊田自動織機を退職。A-MAP4期生としての日々、そして2度目の現役生活が始まった。
A-MAPではメンターとして岩元真一さん(株式会社ICS代表取締役)、ラーニングアドバイザーとして寺田龍二さん(Temple Field LLC CEO・エンジェル投資家)のアドバイスを受けながら、プレゼン大会に向けて準備を進めた。自分はどんな社会課題に貢献できるのかを考えた時、こんな思いが浮かんできた。
「自分はラグビーと出会い、自分の可能性を広げるきっかけを得られた。自分はラッキーだった、で終わることもできたとは思うんですが、『自分が幸せ』だけで終わりにしていいのか。かつての自分のような子どもはまだまだ社会にたくさんいるんじゃないかと思って」