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ひとり親家庭の子どもたちに「きっかけ」を ラグビー選手が乗り出す不平等是正

「親ガチャ」という言葉が流行語大賞にノミネートされたのが2021年のこと。生まれてくる子どもは親を選べないことを意味する言葉には賛否両論あるが、残念ながら家庭環境によって子どもの人生が左右されてしまう現実はある。

豊田自動織機シャトルズ愛知時代は強靱なタックルで鳴らすセンターとして活躍した河合選手【写真:本人提供】
豊田自動織機シャトルズ愛知時代は強靱なタックルで鳴らすセンターとして活躍した河合選手【写真:本人提供】

アスリート対象の学び舎「A-MAP」4期生のプレゼン大会でMVPに輝いた河合航選手

「親ガチャ」という言葉が流行語大賞にノミネートされたのが2021年のこと。生まれてくる子どもは親を選べないことを意味する言葉には賛否両論あるが、残念ながら家庭環境によって子どもの人生が左右されてしまう現実はある。

 すべての子どもたちが自分の持つ可能性に気付く機会を得られる社会を作ることはできないのか――。環境が子どもの芽を摘まない社会の実現を願い、かつての自分と同じような貧困やひとり親家庭の子どもたち、そして保護者たちを思い、行動し始めたのが、ラグビートップイーストBグループのクリーンファイターズ山梨(CF山梨)に所属する河合航選手だ。

 河合選手は2023年8月から現役・元アスリートを対象とした学び舎「A-MAP(Athlete Mindset Apollo Program)」に4期生として参加。受講者はアスリートとして身につけた価値を社会の課題解決に生かす方法を模索するため、各界で活躍する人々の講義を受けたり、受講者間でディスカッションをしたり、提携するビジネス・ブレークスルー大学の授業を受講したり、様々な角度から学びを深めている。

 A-MAPでは例年12月に「自競技の5年後に向けたグランドデザイン(戦略)を考える」というテーマでプレゼン大会を実施しているが、今年は「スポーツで社会の壁を突破せよ ~スポーツの価値を活用し、社会課題を解決する事業の構想~」というテーマで実施。今回、河合選手が立案した、貧困やひとり親家庭等の家庭環境によって習い事を諦める子どもをゼロにする事業プランがMVPを受賞した。

 河合選手は國学院栃木高で花園に3年連続出場を果たし、帝京大では全国大学ラグビー選手権優勝を経験。2011年からは豊田自動織機シャトルズ(現・豊田自動織機シャトルズ愛知)に所属し、トップリーグでもプレーした。ラグビー選手としては順風満帆な道を歩んだ一方、幼少期の家庭環境は決して恵まれたものではなかった。

 埼玉県で食品会社を営む一家の三男として生まれ育ったが、6歳の時、事業拡大に失敗した父が多額の借金を残して家出。以来、母が女手一つで3兄弟を育ててくれた。経済的な余裕はなく「すごく厳しい小学生時代でした」と振り返る。「父親に捨てられたコンプレックスがあった」と何事にも自信が持てず、祖母が心配するほど口数が少なかったが、中学でラグビーと出会い「人生の見える景色が変わった」という。

 ラグビーは1チーム15人で構成され、「小柄でも太っていても足が遅くても、誰にでも合うポジションがあることが魅力」。河合選手は決して足は速くなかったというが、センターを任されると「試合の流れを変えるタックルをした、と褒められたことで自信がついた。タックルだけでトップリーグまで行けたようなものです」と笑う。また、ラグビーに没頭する時間はコンプレックスが入り込む隙間もなかった。

 後方にボールをパスしながら前方のゴールを目指す特性上、ラグビーにコミュニケーションは必要不可欠だ。自己表現やアピールが苦手だった少年は自然と大きな声を出し、人と会話ができるようになっていた。「ラグビーのおかげで自信がつき、仲間もたくさんできました。ガラッと変わったことに、何より祖母がビックリしていました」と話す。

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