雄牛の血を飲み、睾丸を食べたアスリート 五輪から考えるスポーツ栄養の歴史と進歩
日本のスポーツ栄養の今後「サポート環境の整備が一層、求められる」
「Nutrition training」とは、言葉通り「栄養とトレーニング」を統合したトレーニング計画のことです。アスリートたちは皆、シーズン単位でトレーニング計画を立てて、実行しています。その際、必ず栄養の摂り方もセットで考えて計画を立てていくことが、今後ますます重要になってきます。
次に「Real food not nutrients」。アスリートも栄養のほとんどを、サプリメントではなく食べ物から摂っています。これまでは特定の栄養素のみを取り出した研究が主でしたが、今後は食べ物そのものにフォーカスした研究が進むのではないか、とのことです。
現に、例えば、サイクリングの選手を対象に、水か市販のゼリー飲料、じゃがいものピューレを摂取させて、体内での糖質の利用と運動パフォーマンスへの影響を調べるなど、食べ物がアスリートにどう影響するのかの研究が行われています。
特定の栄養素を使った短期間の研究結果は、アスリートの実生活とは異なります。本来のあるべき方向に向かっているのではないか、と教授は述べていました。
最後の「Personalized nutrition」は、個々にあった食事の指導の重要性です。人の体は一人一人異なります。トレーニングと同様、最大限の成果を出すためには、やはり個々にあった栄養サポートが必要になる、ということです。
現在は年間スケジュールに合わせた食事計画を立てて、継続的に栄養サポートを受けているトップアスリートも増えてきました。しかし、栄養サポートを受けるには時間もコストもかかるため、一部の恵まれた環境の人に限られているのが現状です。
日本でもアスリートをサポートしている人たちの多くは、パーソナライズされたスポーツ栄養の必要性を感じています。今後は一人でも多くのアスリートたちが自分の体に合ったトレーニング、メンタルケアと合わせて、栄養面でのサポートを受けられる環境の整備が一層、求められると思います。
(長島 恭子 / Kyoko Nagashima)