東京五輪に学ぶ「UEFAの最新サッカー栄養学」 高校生も参考になる「戦略的摂取」の意識
「THE ANSWER」は東京五輪の大会期間中「オリンピックのミカタ」と題し、実施される競技の新たな知識・視点のほか、平和・人権・多様性など五輪を通して得られる多様な“見方”を随時発信する。「THE ANSWER」でスポーツ栄養の連載を手掛ける公認スポーツ栄養士・橋本玲子氏は「オリンピックと食」をテーマに、スポーツの愛好家、指導者、保護者向けに短期連載を展開。第2回は「UEFAが提唱するサッカー栄養学」について。3月に連載でお届けし、好評だった記事を東京五輪を機会に改めて紹介する。(構成=長島 恭子)
「THE ANSWER的 オリンピックのミカタ」#26
「THE ANSWER」は東京五輪の大会期間中「オリンピックのミカタ」と題し、実施される競技の新たな知識・視点のほか、平和・人権・多様性など五輪を通して得られる多様な“見方”を随時発信する。「THE ANSWER」でスポーツ栄養の連載を手掛ける公認スポーツ栄養士・橋本玲子氏は「オリンピックと食」をテーマに、スポーツの愛好家、指導者、保護者向けに短期連載を展開。第2回は「UEFAが提唱するサッカー栄養学」について。3月に連載でお届けし、好評だった記事を東京五輪を機会に改めて紹介する。(構成=長島 恭子)
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2020年、UEFA(欧州サッカー連盟)は、エリート(プロ)サッカー選手の栄養に関する合意声明 (Consensus statement)を発表しました。
この声明は、最新の栄養学や運動生理学、そして科学的なエビデンスに基づき、サッカー、栄養、運動生理学などの専門家、32名によってまとめられたもの。選手の健康やパフォーマンスの向上を目的とし、主に18歳以上のプロ選手(性別問わず)を対象とした内容となっています。
声明は試合やトレーニング時の栄養補給から、ストレス時の対応、食文化の多様性と考慮事項、レフリーの栄養補給に至るまで、大きく9つの柱に分かれています。全体を通して、フード・ファースト(必要な栄養はサプリメントなどの栄養補助食品ではなく、基本的に食品から摂る)の基本理念の下、最新の科学から得られた知見を応用しての、食事の摂り方・考え方がまとめられています。
今回は声明のなかから、多くの選手が興味を持つであろう、試合時の食事のポイントをお伝えしましょう。
【1】糖質は体重1kgに対し6~8g摂る
UEFAの声明では、試合前日に摂る糖質の目安量を、体重1kgに対し6~8gとしています。例えば体重70kgの選手であれば420~560gに相当。これは白米に換算すると、どんぶり飯で3.5~5杯にあたります。
試合時の食事の考え方として、前日・当日・翌日の3日間に共通するのは、エネルギー源である糖質をしっかり摂ることです。今回の声明で新しいと感じるのは、サッカー選手に適した糖質量を明確に示している点。また、ヨーロッパの選手たちも十分な糖質量を摂れていないケースが多いため、改めて、高糖質・低脂肪の食事を心掛けるよう促しています。
【2】プレマッチ・ミールは体重1kgあたり1~3gの炭水化物を摂る
プレマッチ・ミールとは試合前の補食。補食には、パフォーマンスの向上や、試合中の疲労をできるだけ遅らせる狙いがあります。
ポイントは、試合開始3~4時間前に、体重1kgあたり1~3gの糖質を摂ること。体重70kgの選手で、70~210gが目安となります。日本人選手に馴染みのある補食で換算すると、70gの目安はうどん1人前とおにぎり1個程度。210gとなると、パスタ一人前+おにぎり2個+あんまん1個+果汁100%オレンジジュース1本となります。
補食はガッツリ食べる選手もいれば、試合前の緊張などからあまり食べられない選手もいます。210gの内容をみると「多い」と感じる方もいると思いますが、試合4時間前と考えれば、決して多すぎる量ではありません。例えば、朝食を少な目にして、プレマッチ・ミールはしっかり摂る、など各自工夫をしながら自分に合った摂り方を探っていきましょう。