ラグビー選手は何を食べてあんなに強い? 廣瀬俊朗が語った過酷な日本代表合宿の裏側
「食事はトレーニング」というアスリートの過酷さ
伊藤「正確な数字は分かりませんが、6000キロカロリーはいっていないと思います。ただ、1回の練習で3キロくらい痩せていました。エネルギーの排出量もすごかったと思います。私も廣瀬さんと同じで食べるのが遅かったので、最後まで食堂にいました。出されたものはすべて食べなさいという育ちだったのですが、疲れていると食事も進まず、食欲を沸かせるのも大変でした」
橋本「食事はやっぱり楽しいより必死だったんですね。スポーツをしていない人からすると、アスリートは簡単にたくさん食べるイメージを持っています。でも、スポーツの現場で見ていると、練習で疲れ果てて、必要なエネルギーを取るのがこんなに大変なのかと感じます。食事はトレーニングという感覚ですね。お二人は体重が減ると、具体的にどう対処していましたか?」
廣瀬「体重が減った時に気になるのは水分です。脱水していないか定期的に検査し、脱水気味なら水分を摂取するし、水分以外で減っていたら怖いので、頑張ってもう一品食べて体重を戻そうとしていました。なので、体重は毎朝必ず量りましたね。それがコンディション管理の指標になりました」
伊藤「私は1日4回量っていました。チームに逐一報告しなければいけないので。1日2回の練習の前後、お風呂のタイミング。痩せていると食べなさい、プロテインを摂りなさいと指示を受けます。筋肉が減ってしまうのが一番怖かったですね」
橋本「廣瀬さんは体重を減らさないようにプロテインは摂っていましたか?」
廣瀬「摂っていましたね。朝のスムージーにも入れましたし、もちろんウエイトトレーニングの後にも。なので、1日2回は必ず摂っていました。あとはゼリー系でもBCAAなどが摂れます。たんぱく質は相当摂っていましたね」
橋本「日本代表ではコンディション管理でアプリを使っていたと聞きます」
廣瀬「ONE TAP SPORTSさんのものを使っていましたが、すごく助かりました。朝起きて体重、水分などの数値を測定し、あとは背中、太もも裏、腰、どこがどのくらい張っているか、主観的な疲労度を入力して提出する。コーチはそれに加えて、GPSの(走った距離の)データと実際の選手の反応という3つから、今日はこれくらい追い込めるなと判断して、僕たちのメニューが変わってきます」
橋本「一人一人がコンディションを自分で把握するという意識は大事なんですね」
廣瀬「そういう意味では、食べるとすぐ太る選手はあまり食べず、コントロールしていましたね。プロップの三上正貴選手は全然食べていなかったし、外国人選手も意外と食べない。体が大きくてもあまり食べない選手はいます。逆に、僕みたいに体が小さくて、たくさん食べても大きくならない選手もいるし、これは人によるんだなと思います」
橋本「食事はトレーニングの一環という話でしたが、コミュニケーションの場としても大事だったそうですね」
廣瀬「すごく大事にしていたと思います。練習が終わった後に食事を取るので、今日の振り返りはもちろん、流行っているドラマの話をしたり、ハマっているゲームの話をしたり、すごくいい時間でした。特に、夜の食事は今日もなんとか無事に終わったな~という安心感がありましたね」
橋本「行動が管理される合宿と食事が唯一の楽しみ時間になるという感じですね。話を聞くと、どれくらい大変だったかよく分かります」
廣瀬「二度とあの日々には戻りたくないくらい大変だった(笑)。華英さんもそうでしたよね?」
伊藤「私ももう戻れないし、戻りたくないです(笑)」
橋本「それだけの努力をしているから結果につながっている。なかなか一般の人には見えない部分なので、すごく努力されているんだなと感じます」
(イベントレポートvol.2「ラグビー廣瀬俊朗と競泳伊藤華英 トップアスリート2人に共通『幼少期の食習慣』とは」に続く)
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(THE ANSWER編集部)