激化する米国の勝利至上主義 スポーツ栄養の知識を発信する、ある団体の働き
米国で問題になっていることは今後日本でも起こる恐れ
その中で、スポーツ栄養士が子どもの栄養方針についてまとめた記事によると、
○運動前後のサプリメントについて:運動前にやる気を起こさせるとして飲まれているエナジードリンクは、基本的には「必要がない」というのが「True Sport」の考えです。
エナジードリンクについてはカフェインや砂糖の含有量が非常に多いのが特徴。人によっては体がカフェインに過敏に反応し、吐き気をもよおす、筋肉のけいれん、血圧が上昇するといった症状が出やすいため、安易に摂らないようにと、注意喚起しています。また、運動後のプロテインシェイクについては、必要以上にたんぱく質を摂取してもリカバリーの面で効果は期待できず、成長期の子どもは食事からしっかりと、たんぱく質を摂るようアドバイスしています。
○ダイエット(食事療法)について:アメリカの育成年代の選手たちは、日本では健康や容姿の気になる大人が実践するような、パレオダイエット、ケトジェニックダイエット、脂質制限など、極端な食事制限のあるダイエットを取り入れている現状も問題になっているようです。栄養バランスの偏った食事は、成長期の子供の脳と体の発達に影響を及ぼします。また、食べ物を「よい物」「悪い物」と決めつけるような考え方は、摂食障害にもつながりやすいため注意が必要です。
特に、最近、子どもたちが飛びついているというのが、「デトックス&クレンズダイエット」。こちらは「体のなかをキレイにする」という名目で、例えば野菜やスーパーフードなどで作るドリンクを、食事代わり、あるいは食事に加えて摂る、というもの。しかし、実際の効果効能に関してはエビデンスがあるものではないこと、そして、人間には体に必要のないものは自然と排出される機能が備わっているため、そもそも取り入れる必要はない、と注意。もし子どもが体の不純物を気にするのであれば、「1日を通して水をたっぷりと飲む」「野菜や果物を積極的に摂る」「規則正しい排便(排泄)を促す」よう勧めています。
○加工食品:加工食品の多くは精製された素材や合成保存料などを使用しています。過度にこれらの食品に頼ると、成長期の子どもが活発に活動するために必要な栄養が十分に摂れません。一気に習慣を変えるのは難しいのですが、子どもと一緒に料理をするなどで、健康的な食べ方を実践するのは、さほど難しいことではない、と教えてあげましょう。
今は日本の育成年代でも、プロの下部組織のチーム、あるいは強豪校では、基本的な食事の知識を学んだり、スポーツ栄養士などの専門家から直接話を聞く機会があったりと、子どもも一定の食の知識を得られる機会が増えてきました。ただし、そのような恵まれた環境でプレーする子どもたちはほんの一握りです。多くの現場ではスポーツをする子どもの食教育に関しては各指導者に委ねられているため、その指導方法や内容の違いによって子どもや保護者たちが受ける影響は様々です。
世界で活躍することを目標に掲げることが当たり前になった昨今、日本でも勝利への強いプレッシャーから、スポーツをする子どもたちの薬物依存や摂食障害、燃え尽き症候群など報告されていると聞きます。アメリカで問題になっていることは、今後、日本でも起こる恐れがあります。インターネットの普及で、さまざまな食の情報が乱立する今、正しい食の知識や情報を、子どもたちはもちろん、育成に携わる指導者や保護者が、もっと身近に、確かな情報を学び、共有できる環境作りが、今後の課題だと感じています。
(長島 恭子 / Kyoko Nagashima)