アスリートも料理を経験すべき理由 あるラグビー選手が「自炊」で理解できたこと
Jリーグやラグビートップリーグをみてきた公認スポーツ栄養士・橋本玲子氏が「THE ANSWER」でお届けする連載。通常は食や栄養に対して敏感な読者向けに、世界のスポーツ界の食や栄養のトレンドなど、第一線で活躍する橋本氏ならではの情報を発信する。今回は「アスリートが料理を経験する大切さ」について。
公認スポーツ栄養士・橋本玲子氏の連載、今回は「アスリートが料理を経験する大切さ」
Jリーグやラグビートップリーグをみてきた公認スポーツ栄養士・橋本玲子氏が「THE ANSWER」でお届けする連載。通常は食や栄養に対して敏感な読者向けに、世界のスポーツ界の食や栄養のトレンドなど、第一線で活躍する橋本氏ならではの情報を発信する。今回は「アスリートが料理を経験する大切さ」について。
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各国のスポーツ栄養士たちが、コロナ禍においてアスリートたちをどのようにサポートしているのかを調べていた際、オンラインシステムを活用した料理セッションについての報告が目にとまりました。
アスリートたちは例えば、オリンピック・パラリンピックのトレーニングセンターの食堂など、これまで当たり前だった施設の利用ができなくなっています。そのため、体組成やコンディションを維持するために、自分自身で買い物に行ったり、調理をしたりする機会がグッと増えています。
そこで、スポーツ栄養士たちが中心となり、選手たちが調理技術を学んだり、新しいレシピにチャレンジしたりできるよう、さまざまな料理のコンテンツをオンラインで提供。例えば、アメリカオリンピック・パラリンピック委員会では「Cooking in Quarantine Challenges」と題し、レシピの紹介や選手たちが作った料理を見せるコンテンツをスタート。
アイルランドでは、毎回、アスリートたちが料理のテーマを決める料理教室を開催。そのラインナップは、「一つの鍋でできる“ワンポットミール”」「火を使わないおかず」「10分でできるスナック(軽食)」などなど。参加したアスリートたちは、自分で作った料理をグループチャットやSNSなどにアップするなど、調理そのものも楽しんでいるようです。
さて、「料理教室を開催しますよ」と声を掛けると、当たり前のように選手たちが参加するのは、彼らがトレセンやチームで、しっかり食教育を受けているベースがあるためと感じています。
昨年、アメリカオリンピック・パラリンピック委員会のシニアスポーツ栄養士、ロブ・スキナー氏にインタビューする機会がありました。スキナー氏は大学で栄養学、教育学の学士号、運動科学の修士号を取得。さらにストレングス&コンディショニングスペシャリストなど数々の資格を持つ、栄養学と運動生理学のエキスパートです。
22年に渡り、様々な種目のアスリートをサポートしているスキナー氏ですが、世界の食文化の見識・見聞を広げてほしいと、機会があればアスリートに向けた料理教室を開催しています。選手たちにとって食事は、パフォーマンス向上のためだけでなく、教育的見地からも理解を深めることが重要である、とスキナー氏。
例えば、他国に遠征を控える選手たちがいれば、その国の料理を一緒に作り、遠征先で何を食べればよいのかをレクチャー。現地で役に立つ実践的な力をつけると同時に、現地の食文化への理解を深めることで、選手たちの人間的な成長にもつながると考えています。