“平成のスライディング王”亀山つとむ氏が福島・いわきの小学生に熱血指導
「野球の守備は5通りの捕り方ができれば、だいたいの打球は捕れるようになるんだぞ!」声の主は、元阪神の亀山つとむ氏。“平成のスライディング王”の異名を取り、気迫あふれるプレーで甲子園を沸かせた。そんな往年の名選手の言葉に熱心に聞き入るのは16人の小さな野球少年たち。両者を引き合わせたのは「東北『夢』応援プログラム」だ。
元虎戦士が説く、守備がうまくなる方法 「5通りの捕り方」ができればだいたい捕れる
「野球の守備は5通りの捕り方ができれば、だいたいの打球は捕れるようになるんだぞ!」
10日、福島・いわき市内の小学校のグラウンドで、元プロ野球選手の声が響いた。声の主は、元阪神の亀山つとむ氏。“平成のスライディング王”の異名を取り、気迫あふれるプレーで甲子園を沸かせた。そんな往年の名選手の言葉に熱心に聞き入るのは16人の小さな野球少年たち。両者を引き合わせたのは「東北『夢』応援プログラム」だ。
公益財団法人「東日本大震災復興支援財団」が行っている企画は、被災地の子供たちに対し、毎日、直に接することができなくても、動画やテキストメッセージを使いながら、オンライン上で1対1の遠隔指導を続け、子供たちが設定した目標に少しでも近づける――。そんな画期的なコンセプトの取り組みだった。
亀山氏は野球編で「夢応援マイスター」という先生役を務め、「いわきFスポーツクラブ」の小学生に1年間、指導を行ってきた。この日は集大成となる成果発表イベント。受けてきた教えを披露する日、1年ぶりの再会となり、体つきも逞しくなった子供たちも生き生きとした表情で、グラウンドに飛び出していった。
今年1年間、取り組んできたのは打撃。まだ試合を経験したことがないとあって「素振り」「ティーバッティング」「椅子に座ってスイング」と基礎を大切にした課題を与えていた亀山氏。1人1人の成果発表を真剣な表情で「良いスイングだ!」などと声をかけながら見守り、子供たちもまた、取り組んできた成果を出そうと真剣な表情だ。
「素振りに大事なのは相手を意識すること。顔をマウンドに向け、試合に出るつもりでやること。ティーバッティングはアッパースイングにならず、レベルスイングでしっかりとボールにスピンがかかると飛ぶようになるから」などと亀山氏は語りかけ、実際にロングティーも披露。元プロ野球選手の鋭い打球に子供たちも「すげー!!」と大喜びだった。
子供たちに説いた「5通りの捕り方」とは? 「これができれば、だいたいは捕れる」
そして、この日は新たに1年間、プログラムを継続する子供たちに加え、新規に参加する子供たちの「夢宣言イベント」でもあった。次の1年は守備をテーマに掲げた。今後、遠隔指導するにあたり叩き込んだのは、基本となるキャッチボールの大切さ。「相手の胸を狙って投げる」というたけでなく、もっと具体的なポイントを説いた。
「胸とひと口に言っても範囲が広い。帽子のマークと右胸と左胸を線で結ぶと、三角形になる。その三角形を的にして投げよう。真ん中に来るのは、相手の顎の部分。しっかりと的の真ん中を狙うように」。キャッチボール一つ取っても、「投げる」「捕る」という野球の基本動作をしっかりと意識をもって取り組むことで上達の近道になる。さらに、こうも説いた。
「野球の守備は5通りの捕り方ができれば、だいたいの打球は捕れるようになるんだぞ!」
亀山氏が挙げたのは、正面で捕る打球(ライナー)、顔の上で捕る打球(フライ)、足元で捕る打球(ゴロ)、フォアハンド、バックハンドの5つ。大事にするのは「足を動かし、体の正面で捕ること」。難しいフォアハンド、バックハンドも「へそをボールに向ければ、その瞬間にボールに対して“正面”になる。そうすれば捕りやすいよ」と目から鱗の言葉で手ほどきした。
こうして実際の捕球、送球の心得を説き、2時間のクリニックを終えた。続いて行われた閉会式では、まず1年間の修了証授与式で、1人1人が亀山氏の前で1年間を振り返って発表。「打球を遠くに飛ばせるようになった」「亀山さんに指導してもらえて上手になれた」など、それぞれが成長を感じた点を述べた。
子供たちに届けた想い「空振りやエラーを怖がってはいけない」
さらに、新たな1年間のスタートとなる「夢宣言」では「プロ野球で捕手になりたい」「1年後には100キロ以上投げたい」と将来の夢や1年後の約束を発表。今後、遠隔指導を受けながら、再び直接指導を受ける時までに成長する姿をそれぞれが思い描いた。最後に亀山氏はこんな言葉を語りかけ、締めくくった。
「これをやってすぐに上手になるということはない。ただ、今日教えたようなことを頭に入れてくれれば、効率的に上手になっていくことができるから。失敗することを恐れないでチャレンジしてほしい。空振りやエラーを怖がってはいけない。失敗することで成長していくことができる。野球も遊びも一生懸命やって、あとは阪神も応援してね」
締めにはジョークを交えながら、真剣な表情で語りかけた亀山氏。野球を上手になることより大切なことは挑戦し、失敗しながら生きる力を身につけること。そんな思いが込められているようだった。浪速の元名選手と東北の子供たちをつないだ白球の物語は、これからも続いていく。
(THE ANSWER編集部)