伊藤華英さんが東日本大震災復興支援財団「東北『夢』応援プログラム」に出演
競泳で北京、ロンドンと五輪2大会に出場した元日本代表スイマー・伊藤華英さんが13日、公益財団法人東日本大震災復興支援財団が立ち上げた「東北『夢』応援プログラム」のイベントに岩手・大船渡で登場。来年3月までの半年間、現地の子供たちを対象に水泳指導を行っていく。この日は指導始めとなる「夢宣言イベント」が開催され、伊藤さんは2時間半にわたって10人の子供たちと交流した。
「笑顔があふれ、震災に負けない街に…」 大船渡の子供と伊藤華英さんの7年目の歩み
競泳で北京、ロンドンと五輪2大会に出場した元日本代表スイマー・伊藤華英さんが13日、公益財団法人東日本大震災復興支援財団が立ち上げた「東北『夢』応援プログラム」のイベントに岩手・大船渡で登場。来年3月までの半年間、現地の子供たちを対象に水泳指導を行っていく。この日は指導始めとなる「夢宣言イベント」が開催され、伊藤さんは2時間半にわたって10人の子供たちと交流した。
穏やかな晴れ間がのぞいた岩手・大船渡。南三陸の海にほど近い屋内プールに子供たちの歓声が響いていた。そんな様子を温かいまなざしで見守りながら、指導したのが伊藤さん。「最初はできなくてもいいから、まずはやってみることが大切だよ」などと声をかけ、子供たちのやる気をくすぐった。
伊藤さんが登場した「東北『夢』応援プログラム」は各競技のトップランナーが遠隔指導ツールを駆使し、動画を通じて被災地の子供たちを指導するプログラムだ。2016年から賛同し、コーチ役の「夢応援マイスター」として参加7年目になる伊藤さん。受講する子供たちから練習した動画が送られ、月1回のやりとりを繰り返しながら水泳の技術向上を目指していく。
この日は半年間に及ぶプログラムの初回となる「夢宣言イベント」。小1~6年までの男女10人が参加した。対面は施設の会議室で行う。集まった子供たちはオリンピック選手に会えるとあって、少し緊張した面持ち。しかし、伊藤さんが登場し、笑顔で話しかけると緊張は解け、目が輝いた。
「今年も10人も応募があって、凄く嬉しいです。2016年から大船渡に来させてもらって、いつも温かい気持ちになります。水泳を通じて、こうやってみんなとつながることができて嬉しいです。これから半年間、よろしくお願いします」
伊藤さんがこう挨拶した開会式では、2度の五輪に出場した現役時代をまとめたVTRを鑑賞し、今から教えてくれる伊藤さんの凄さを実感。そして、場所をプールに移して直接指導によるクリニックが行われ、子供たちは元気良く水面に飛び込んだ。
最初はけのびなど、基礎的な練習からスタート。「クロールは息継ぎの体をねじった状態でもキックを利かせるとよく進むよ」と言い、横向きで泳いでキックの練習も行った。慣れない態勢に最初は悪戦苦闘したが、必死に取り組む子供たち。参加者の大半は12月に行われる地域の水泳大会に出場予定とあって、大会向けにスタートの飛び込みの練習も。全員未経験だったが、回数をこなすうちにどんどん上達していった。
わずか1時間ですら子供たちの成長が見受けられたクリニック。ラストは、それぞれが上達させたい泳法でタイムを計測した。このタイムを半年間でどれだけ縮められるか。伊藤さんのアドバイスを受けながら、チャレンジしていくことになる。
伊藤さんが子供たちに送ったメッセージ「みんな、他の人にはなれません」
再び会議室に戻り、行われたのは今回のメインイベントとなる「夢宣言」。参加する子供たちが「将来の夢」「未来の自分の街をどうしたいか」「半年後の約束」をノートに書き込み、発表していく。
子供たちが頭を悩ませながらも思いを込めた宣言を、伊藤さんも見守った。
「将来の夢」には「水泳を続けてプロになること」「プロ野球選手になりたい」「海上保安庁に勤めたい」などの声が上がり、「半年後の約束」では「0.1秒でもいいからタイムを縮めたい」「教えてもらったことを忘れず泳ぎたい」など、それぞれが成長を誓った。
参加した子供の多くは震災後に生まれた世代。しかし、「未来の自分の街をどうしたいか」では「水産業が盛んで安心して住める街にしたい」「笑顔があふれて、震災にも負けない街にしたい」など、生まれ故郷への愛情が伝わる子供たちの言葉が印象的だった。
締めくくりはトークコーナー。子供たちが次々と挙手して質問し、それに伊藤さんが答えていく。「好きな食べ物は何ですか?」という子供らしいものから「どうしたら、そんなに速く泳げるんですか?」という水泳にまつわる質問まで。
現役時代は1回の練習で13キロ泳いだという話には子供たちも目を丸くした。2度出場した五輪について振り返った伊藤さんは「五輪に出られたことも嬉しかったけど、そこまで一緒に頑張った仲間がいて、一緒に過ごした時間が凄く大切になった。だから、みんなも学校の友達や仲間を大切にしてね」と呼びかけた。
そして、最後に行われた閉会式。伊藤さんは「最初からみんな凄く泳ぎが上手でした」と1日を振り返り、メッセージを送った。
「これから何が大切かということ、自分の目標に向かって頑張っていくこと。みんな、他の人にはなれません。人と比べず、自分のベストを尽くすこと。その中でいろんな人が助けてくれるので、感謝の気持ちを持つこと。タイムを達成することも大切だけど、達成するために何を考えてどう頑張るかも大切。結果はコントロールできないけど、自分の頑張りはコントロールできる。まずは今、目の前のことを一生懸命に頑張ってみてほしいです」
感謝や努力、目標設定。水泳から学べる人生において大切なこと。それを教えてくれる言葉に、子供たちも真剣な表情で聞き入った。
伊藤さんにとって、7年目の取り組み。「大船渡でみんなと会えるのが楽しいし、だんだんと街も変わっていきます。このサポートを通じて、大船渡をもっともっと知っていきたいです」と言って、再会を誓った。
大船渡の子供たちと伊藤さんの、また新たな半年間が始まった。
(THE ANSWER編集部)