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「THE ANSWER的 国際女性ウィーク」オンラインイベント第1部「月経とコンディショニング」

国連が「女性の生き方を考える日」と定めた3月8日の国際女性デーに向け、「THE ANSWER」は女性アスリートの今とこれからを考える「THE ANSWER的 国際女性ウィーク」を開催。その一環として「女性アスリートのカラダの学校」と題したオンラインイベントが2部構成で6日に行われ、約150人が参加した。「月経とコンディショニング」と題した第1部では、講師に月経周期を考慮したコンディショニングを研究する日体大・須永美歌子教授、ゲストに1月に現役引退した元陸上日本代表の福士加代子さんを迎え、1、2部ともに元競泳日本代表の伊藤華英さんがMCを務めた。

「THE ANSWER的 国際女性ウィーク」の一環として「女性アスリートのカラダの学校」と題したオンラインイベントを開催、元陸上日本代表の福士加代子さん(中央)をゲストに迎え、講師に日体大・須永美歌子教授、MCを元競泳日本代表の伊藤華英さんが務めた【写真:編集部】
「THE ANSWER的 国際女性ウィーク」の一環として「女性アスリートのカラダの学校」と題したオンラインイベントを開催、元陸上日本代表の福士加代子さん(中央)をゲストに迎え、講師に日体大・須永美歌子教授、MCを元競泳日本代表の伊藤華英さんが務めた【写真:編集部】

39歳まで走り、月経に困らなかった陸上・福士加代子 自然と実践していた「重要な基本」

 国連が「女性の生き方を考える日」と定めた3月8日の国際女性デーに向け、「THE ANSWER」は女性アスリートの今とこれからを考える「THE ANSWER的 国際女性ウィーク」を開催。その一環として「女性アスリートのカラダの学校」と題したオンラインイベントが2部構成で6日に行われ、約150人が参加した。「月経とコンディショニング」と題した第1部では、講師に月経周期を考慮したコンディショニングを研究する日体大・須永美歌子教授、ゲストに1月に現役引退した元陸上日本代表の福士加代子さんを迎え、1、2部ともに元競泳日本代表の伊藤華英さんがMCを務めた。

 39歳まで現役生活を送り、五輪に4大会出場した陸上長距離界のトップランナー福士さん。第1部のトークセッションでは、まず伊藤さんから現役時代の月経のトラブルについて質問を受け、回答した。

「不順は不順でしたけど、トラブルなど特に困ったことがないアスリートでした。ちょっと痛いくらいで、パフォーマンスに影響するほどでもなかった。(月経が)来たときは、むしろ調子いいな、というくらいでマイナスなことはなかったですね」

 特に月経がレースに影響することはなく、腹痛があることでお腹を意識することができ、「逆にプラスに捉えていた」という。

 須永教授からは、日体大の女子学生を対象に実施した調査で、コンディションは「月経後が良い」「月経前と月経中は悪い」という声が多かったデータを紹介。ただ、「関係なかった」という数も一定数あり、やはり個人差が大きいと説明された。

「それがデータとして分かっているなら、知識として頭に入れておくことで、月経中に少しコンディションが悪くても、それは自分の問題ではないと考えられて、トレーニングを調整できる。それを意識することで、自分のカラダと向き合えることがプラスになるのではないか」と福士さん。

 そもそもなぜ女性は月経によって体調や気分が変化するのか。須永教授が解説した。

 それは、月経周期によって女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)が影響するため。月経周期は25~38日が一般的に正常とされるが、月経後にエストロゲンが高くなり、月経前にはエストロゲンとプロゲステロンが上がり、月経が始まると両方のホルモンがまた低くなる。このホルモンの上下動は女性だけのもので、男性ホルモンにはないという。

 女性ホルモンは乳房や卵巣など女性にある臓器だけに影響すると思われがちだが、実際は血管、心臓、神経細胞や呼吸器などのさまざまな臓器にも影響を与える。そのため、女性は月経周期によって体調や気分に変化を来たすことが多いという。須永教授は「月経中、月経後、月経前に自分の調子はどうなのか、いつどうなるのかが分かることで、コンディション調整に役立つのではないか」と提案する。

 引退後、月経周期に変化はあったのかという問いに、福士さんは「現役時代よりも周期が少しゆったりめになった気がする。月経は1か月に1回くるものだと思っていたので、周期が25~38日もあることを初めて知った」と語った。

 須永教授は「実は25日周期の方では、1か月のうち上旬と下旬に2回、月経が来ることになるのですが、それは正常なんです。ですから、女性の方はまずは自分がこの周期に当てはまっているのかどうか、確認してみてください」とアドバイスを送った。

須永教授は月経に異常があったときの危機管理を訴えた【写真:中戸川知世】
須永教授は月経に異常があったときの危機管理を訴えた【写真:中戸川知世】

無月経は“頑張っている証し”ではなく「病気」の状態

 トークは福士さんの周囲の経験にも及んだ。月経に関する大きな悩みはなかったが、選手や後輩から相談されたことはあったという。

「後輩に疲労骨折が多くなった選手がいて、その原因として月経が随分と止まっていたからじゃないか、ということがありました。それで婦人科で診てもらい、月経を誘発させるために女性ホルモンの注射を打ってもらったり、薬やパッチなどを使って月経を起こした選手は多かったですね」

 3食きちんと食事を摂っていたものの、月経が止まってしまった。その後に起きた疲労骨折。ハイパフォーマンスを求められるトップアスリートだけに、練習量が影響を与えているのではないか。須永先生はその因果関係について「ある」と解説した。「少しずつ言葉として普及してきた印象がありますが、『女性アスリートの3主徴』というものがあります」。その内容はこうだ。

【女性アスリートの3主徴】

1.利用可能エネルギー不足。食べている量が足りない、もしくは食べているが運動しすぎてエネルギーが足りない状態。

2.視床下部性無月経。脳にある視床下部から月経の命令が下されるが、エネルギーが不足している、ストレス過多、急激な体重減少があると、コントロール不能になり月経が止まってしまう状態。

3.骨粗しょう症。月経が止まるとエネルギー不足により骨形成の材料が入ってこない。また女性ホルモンは骨の代謝に関係するため、無月経は骨量の低下が進行し、疲労骨折しやすくなる状態。

 説明を聞いた福士さんは「そういえば、痩せないといけない時期は食べていなかったので、そういったときは月経がこなかった時期も少しあった。そうなると、『あれ、体に何か悪いことしたかな』と考える機会になった。それでちょっと考えようかなと。すると、『ああ、やばいことしてたかもな』と思い当たる節があった」と経験談を語った。

 これを受け、須永教授も「月経に異常があったときに『やばい』と感じてもらえたらすごくいい。それで食事や運動量を見返してもらえたらいいですね。逆に怖いのは、月経が止まると頑張っている証拠だと感じることです。そういう考え方はやめていただきたい」と訴えた。

 さらに「無月経は病気です」と語気を強める須永教授。「病気の状態でトレーニングをやったとしても100%の力は発揮できませんし、体にダメージを与え続けることになってしまいます。病気だからこそ、まずはしっかりと立て直すことが大事です」と語った。

 骨の形成には10代が最も重要とされる。そのため、福士さんのように長く現役で活躍し、良いパフォーマンスを発揮し続けるためには、無月経にならずに競技を続けることも非常に大事だ。福士さん自身も、長く現役を続けられた要因として「体への大きなダメージがなかったこと」と分析する。

「仮に(ダメージが)あったとしても休むことで、ダメージをなくすことができた。無理していたんだなと感じたときに休むと、意外とストレスを溜め込んでいたことに気づくこともできた。なので、普段からストレスなく楽しく過ごしていたら、気が付いたら長く続けられた。これからの人生の方が長いので、骨がボロボロになる前に、健康的に、もうちょっとできたんじゃない? と思われるくらいで引退する方が、私は良いと思う」

MCを務めた伊藤さん(左)と講師の須永教授【写真:中戸川知世】
MCを務めた伊藤さん(左)と講師の須永教授【写真:中戸川知世】

福士さんが自然と行っていたコンディショニングの最も大切な基本

 さらに、月経が止まってしまう要因の一つに、オーバートレーニング症候群がある。須永教授によると、過剰なトレーニングによって運動能力や競技成績が低下し、短期間では回復しなくなる状態のことで、身体的症状や精神的症状の両面から自身の状態を診断することができるという。

 ここで須永教授から福士さんに質問。

「思い切って休むことが重要だと話されていました。食事やトレーニングをメニューのなかに組む選手が多いですが、休みを組み込む選手は珍しいと思います。休みのときに重要視していたことは何ですか?」

 福士さんは「そのときの自分の気分ですね」とし、こう答えた。

「動きたい、どこかに行きたい、発散したい時もあれば、意外と体は休みたい時もある。とりあえず、ここにはいたくないから外に出て、環境だけを変えたい。なので、とりあえず今、自分がどんなストレスを抱えているかを見に行っていた。自分は体験型で、やってみたいと分からないタイプ。

 一度、外に出て、違うと思ったら帰ってきたり、出た先でちょっと寝ちゃったり。外に出てみたけど、誰にも会いたくないと分かったら海を見て、ただボーっとして。そうしたら意外とリフレッシュして帰ってきたり。食べたくなったら制限をかけずにたくさん食べていたりしていましたね」

 これを聞いて須永教授は「自分のカラダときちんと向き合っているからできていることだと思いますし、コンディショニングの基本で一番重要なところです。やはり福士さんは極めていると思います」と舌を巻いた。

 福士さんの体験談をもとに「月経とコンディショニング」について行われた1時間のトークセッション。改めて、女性にとって当たり前に来る月経が、競技者のコンディショニングと重要な関係性があることが分かった。

 イベントでは事前に募集した視聴者の方からの質問に答え、最後に須永教授と福士さんからメッセージ。

 須永教授は、研究者の立場として「自分の月経が正常なのかどうか、痛みはどうなのか。健康か病気かをまずはチェックしてほしいと思います。また、月経中、そして月経の前と後で自分のコンディションがどうなのか。そのうえで自分ではどうにもならない場合は婦人科を受診することをおすすめします。まずは自分が月経で困っているかどうかを改めて確認してほしい」と競技者や指導者へメッセージを送った。

 一方、福士さんは月経など女性アスリートのコンディショニングにまつわるイベントに初めて参加したという。

 競技者の立場から「高校時代までは私自身はほぼ無知な状態だったけど、ワコールに入ってからとても身近になって、婦人科の方に気軽に聞ける環境がありました。それでホッとしました。なので、相談できる人が近くにいると精神的にラクになるので、聞きづらい人には誰かが代わりに聞いて教えてあげるのもいいかなと思いました」と周りからのサポートの重要性を指摘し、アドバイスを求めた。

(THE ANSWER編集部)

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