「東北『夢』応援プログラム」の中間発表イベントをオンライン開催
冬本番の1月29日、宮城県気仙沼市で活動する気仙沼ミニバスケットボール少年団の小学生たちが「東北『夢』応援プログラム」の中間発表イベントに参加した。「夢応援マイスター」として子どもたちをサポートするのは、バスケットボール元日本代表で3人制バスケ「3×3」でもプレーした渡邉拓馬氏。本来であれば気仙沼を訪問し、直接指導したいところだが、新型コロナウイルス感染再拡大の影響によりオンライン開催となった。
渡邉拓馬氏がオンラインで気仙沼の小学生と再会 470キロの距離を超えて届けた助言
冬本番の1月29日、宮城県気仙沼市で活動する気仙沼ミニバスケットボール少年団の小学生たちが「東北『夢』応援プログラム」の中間発表イベントに参加した。「夢応援マイスター」として子どもたちをサポートするのは、バスケットボール元日本代表で3人制バスケ「3×3」でもプレーした渡邉拓馬氏。本来であれば気仙沼を訪問し、直接指導したいところだが、新型コロナウイルス感染再拡大の影響によりオンライン開催となった。
オンライン会議システム「Zoom」は、渡邉氏のいる東京と子どもたちがいる気仙沼を隔てる約470キロの距離を一気に縮めた。朝9時半のスタート時、画面に並んだのは11人の子どもたちの笑顔。コロナ禍の影響もあって欠席した8人と合わせ、プログラムに参加する子どもたち19人はこの日までに、渡邉氏から出された3つの課題に取り組んでいた。
「東北『夢』応援プログラム」は、公益財団法人東日本大震災復興支援財団が立ち上げた、年間を通して子どもたちの夢や目標を応援するプログラム。「夢応援マイスター」を務めるアスリートや元アスリートが、参加する子どもたちがそれぞれに掲げる半年後、あるいは1年後の目標に向かって、遠隔指導ツールでサポート。1日限りのイベントで子どもたちとの交流を終えるのではなく、離れた場所でも動画やSNSを通じて継続したプライベートレッスンが受けられるという画期的な試みだ。
10月から始まったプログラムで、渡邉氏が遠隔指導ツールを通じて与えた課題は「マイカンドリル」「ドリブルスキルドリル」「シュートフォームチェック」の3つ。子どもたちが約3か月でどのような成長を遂げたかのか、渡邉氏がオンラインで確認した。
「限られた時間を有効に使いながら、みんなにとってプラスになることがあればいいなと思います。楽しくやりましょう!」という渡邉氏の掛け声を受け、まずはボールを使った準備体操からスタート。屈伸、開脚など基本的な運動の後は、座って大きく開いた両脚の周りを指先で小さくドリブルしながらボールを移動させたり、仰向けに寝転んだ状態から上に向かってチェストパスをしたりレベルアップ。ボールの扱いに苦戦する子どもたちの様子に、渡邉氏はたまらず笑顔を咲かせた。
その後で取り組んだのは、40秒間のシューティングドリル。次のような手順で実施された。
1.フリースローを打つ
2.シュートが入っても入らなくてもリバウンドを取る
3.リバウンドを取ったらマイカンドリルのシュート(左右1本ずつ)を打ってリバウンド
4.ドリブルをしながら置いてあるコーンの外側を回って再度フリースローの位置に戻り、フリースローを打つ
5.シュートが入っても入らなくてもリバウンドを取る
6.リバウンドを取ったらバックシュート(左右1本ずつ)を打ってリバウンド
これを40秒間繰り返し、フットワークとリズムにも注意を払いながら、できる限り多くのシュートを打って、決めること、ドリブルをしっかりすることを目標とした。
バスケのスキルと合わせ、渡邉氏が伝えた「仲間を思いやる心」
子どもたちは1人ずつシューティングドリルを行った後、渡邉氏と1対1でのオンライン面談を実施。「フリースローの時はフォロースルーを長くするといいよ」「バックシュートの時はもっと上にジャンプすると楽にシュートが決められると思うな」「柔らかくてタッチがいいシュートだね。指先の使い方を意識するともっと良くなるよ」と、子どもたちにとって分かりやすい具体的なアドバイスを送った。
この日、多くの子どもたちに共通したアドバイスは、ゴール下でワンハンドシュートを打つ時の注意点だ。早い段階からシュートを打つ方の手だけでボールを持つ子どもが多かったが、渡邉氏は「1・2・3のリズムでシュートを打つとしたら、両手でボールを持ったまま1・2とステップを踏んで、3で片手に持ってシュートすると、よりリングの近くでシュートができるし、ディフェンスにも邪魔されないよ」と説明。アドバイスを受けた子どもたちは納得の様子だった。
元日本代表選手に直接質問できる貴重なチャンスを生かさない手はない。「3ポイントシュートを打つ秘訣を教えてください」「レイアップの時に手が開かないようにするにはどうしたらいいですか」「きれいにシュートを決めるコツを教えてください」など、積極的に質問する子どもたちもいた。
子どもたちが大きく頷きながら聞き入ったのは「オフェンスの時とディフェンスの時は、それぞれ何を考えるといいですか」という質問に対する答えだった。
「オフェンスの時はボールを思った味方プレーヤーが気持ち良くプレーできるように動くといいと思います。自分が相手の立場だったら、どういう状況が攻めやすいか考えてみると答えは見えてきます。ディフェンスが得意な人は、苦手な人を助けてあげてください。そうすれば、自分がピンチになった時、誰かが必ず助けてくれます」
自分よがりのプレーをするのではなく、仲間を思いやりながらプレーする大切さは、子どもたちにもしっかり伝わったようだ。
楽しい時間はあっという間に過ぎてしまう。閉会の時間がやってきた。小学5年生の伏見心音さんは「貴重な機会をありがとうございました。分からないことが聞けて良かったです」と笑顔。同じく小学5年生の吉田芽太くんも「自分のためになる時間になりました。ありがとうございます!」と感謝を伝えた。
最後に渡邉氏は「試合をイメージしながら練習をすると上達するスピードが上がります。今後の課題も基本的なスキルが多いけれど、試合をイメージしながら取り組んでみてください。あと3か月頑張りましょう!」と熱いメッセージを送った。
寒さが和らぐ頃に訪れる成果発表イベントこそは、気仙沼を訪問して直接子どもたちと触れ合いたいと願う渡邉氏。残り数か月、子どもたちが持つ伸びしろは無限大に広がる。
(THE ANSWER編集部・佐藤 直子 / Naoko Sato)