城下町・会津若松の子どもたちを渡邉拓馬氏が指導、最初に与えた金言は
秋深まる福島・会津若松市。古い街並みが残り歴史溢れる城下町に18日、子どもたちの元気な声がこだました。声の主は、会津若松市立川南小学校で活動するミニバスケットボールチーム「川南ドルフィンズ」の小学1年生から6年生までの子どもたちだ。今年から「東北『夢』応援プログラム」に参加することになった子どもたちを訪問したのは、日本代表で活躍した渡邉拓馬氏。夢宣言イベントとあわせ、地元・福島の後輩たちにバスケットボールを楽しむ大切さを伝えた。
楽しみながら考える力を… 元バスケ日本代表が故郷・福島で伝えた成長のカギ
秋深まる福島・会津若松市。古い街並みが残り歴史溢れる城下町に18日、子どもたちの元気な声がこだました。声の主は、会津若松市立川南小学校で活動するミニバスケットボールチーム「川南ドルフィンズ」の小学1年生から6年生までの子どもたちだ。今年から「東北『夢』応援プログラム」に参加することになった子どもたちを訪問したのは、日本代表で活躍した渡邉拓馬氏。夢宣言イベントとあわせ、地元・福島の後輩たちにバスケットボールを楽しむ大切さを伝えた。
朝9時半。新型コロナウイルス感染予防対策をしっかり行った体育館で、ソーシャルディスタンスを保ちながら座る約35人の子どもたちは、身長188センチの渡邉氏が登場すると驚きの表情を浮かべた。福島県出身の渡邉氏は、子どもたちにとっては憧れの大先輩。「バスケを30年くらいやってきました。そこで得た経験や思いを、みんなに伝えていきたいと思います。僕が言ったことにプラスして、自分で考えながら練習をしてみて下さい。自分で考えると成長に繋がります」とアドバイスを受けた子どもたちは、目を輝かせながらクリニックをスタートさせた。
まず、渡邉氏が紹介したのは、変形鬼ごっこだ。ボールを持たない鬼が、ドリブルしながら逃げる子を追いかけるというもの。ただし、鬼も子も移動できるのはバスケットボールコート内に書かれたラインの上だけ。鬼は1人だけではないので、逃げる子も広い視野を持ちながらドリブルをして移動しなければならない。始めはやや表情の硬い子どももいたが、いつもと少し違った鬼ごっこが始まると、たちまち満面の笑みと歓声が上がった。
コロナ禍で4か月間の活動自粛、7か月ぶりの全体練習でスペシャルゲストによる指導
続いてはパス練習。渡邉氏は「体が安定するスタンスを取ること」「指先を使ってパスを出すこと」「膝を曲げるのではなくお尻を落とすこと」など、怪我をしないための基本をアドバイス。片手パス&片手キャッチ、片足立ちでバランスを取りながらのパス、バレーのトスアップなど、バラエティに富んだパス練習の方法を紹介した。
2人の中間に位置する人の股下にワンバウンドでパスを通す練習をしたり、1メートルほどの間隔で置いた2つのコーンを使い、鬼ごっこの要素を取り入れて小回りを利かせながらドリブルしたり、素速い攻守の切り替えをしたり。1対1のシュート練習ではコーンが置かれた場所を通過するとポイントをゲットできるなど、渡邉氏が紹介したメニューはどれも、子どもたちが楽しみながらも、知らず知らずのうちに頭を働かせ、同時にスキルが身につく仕組みとなっている。
4対4のミニゲームが始まると、「こっちこっち」「行くよ!」「やったー!」など、子どもたちの口から自然と仲間を呼ぶ掛け声が飛び出すようになった。普段から「子供たちに必要なのは、厳しい指導ではなく、楽しむことと考えること」と考える渡邉氏が願う通りの成長を見せた子どもたち。この様子を頼もしそうに見守ったのが、「川南ドルフィンズ」の遠藤コーチだ。
コロナ禍もあり、4月から4か月間の活動自粛を強いられた。子どもたちは外で遊ぶこともできず、バスケットボールへの思いを募らせた。活動再開後も3密を避けるために、男女別のスケジュールで練習を実施。全員が集合したのは、この日が実に3月以来、初だった。「川南ドルフィンズ」では、バスケットボールを通じて子どもたちが考える力を身につけたり、他人への挨拶や礼儀など人として大切なものを学んでほしいと願っている。その中で、子どもたちが夢や目標に向かって頑張る大切さを知ってほしいと、「東北『夢』応援プログラム」に参加することになった。
渡邉氏「サポートしてくれる人に感謝しながら、普段の生活からポジティブに」
「東北『夢』応援プログラム」は、公益財団法人東日本大震災復興支援財団が立ち上げた、年間を通して子供たちの夢や目標を応援するプログラムだ。「夢応援マイスター」を務めるアスリートや元アスリートが、参加する子供たちがそれぞれに掲げる半年後、あるいは1年後の目標に向かって、遠隔指導ツールでサポート。1日限りのイベントで子供たちとの交流を終えるのではなく、離れた場所でも動画やSNSを通じて継続したプライベートレッスンが受けられるという画期的な試みだ。
楽しい時間ほど、あっという間に過ぎてしまう。クリニックを終えると、遠隔指導に参加する10人の子どもたちが夢達成ノートに「わたしの将来の夢」「未来のわたしの町をどうしたい?」「半年後の約束」を記入し、渡邉氏の前で元気に発表した。「将来の夢」として「プロバスケット選手」をあげたのは1人だったが、「学校の先生」「人の役に立てる人」「美容師」「科学者」など、それぞれ未来に向かって大きな夢を膨らませた。同時に「半年後の約束」に掲げたのは、「ドリブルを強くしたい」「たくさん試合に出て優勝すること」「足を動かして緩急をつけたプレーをすること」など具体的な目標ばかり。渡邉氏は、目標を立て、それに向かって努力する大切さに触れ、子どもたちに「お父さんやお母さん、コーチなどサポートしてくれる人に感謝しながら、普段の生活からポジティブに楽しみながら半年頑張りましょう!」とエールを送った。
半年という短い期間ではあるが、ここから遠隔指導ツールを通じた渡邉氏と子どもたちの交流が始まる。来年3月の成果発表を迎える頃には、福島という土地が繋いだ縁は太く確かなものとなっているだろう。
(THE ANSWER編集部)