「上っていくばかりじゃ面白くないでしょ、人生」 W杯落選、島暮らしで孤立も味わった久保竜彦の生き様
「サッカーはやろうと思ったら、そこら辺でできるし。別にそれでええやん」
実は、久保の生活は今、転機にある。それは、父として。
12歳で日本一を経験したこともあるテニスプレーヤーの次女・杏夏がこの春、高校を卒業。米国に拠点を移すか、春から妻と娘が暮らす横浜に移って相談を続け、その間、地方でのサッカーイベントに顔を出し、過ごしてきた。
小さい頃から暖房は使わず、「寒い」と言えば、「そこら辺、走って来ればあったまるやろ。それか相撲で」という流儀で育てた。家にテレビがないのも、受験勉強に集中させるため「(配線を)ブチッとやった」から。
「娘がまだバシッとなってないけえ。それをちゃんとなるように。自分でするのが普通なんやけど……手助けじゃないけど、そういう感じで。室積でやりたいことあるけえ。長くおらんかったら忘れられるしね。今度、帰っていろいろ話さんといけんね」
そう頭を悩ませる姿は、父としての人間味も感じさせる。
まもなく50歳も見えてくる。これからについて話を向けると「やっぱ、あれよね」と切り出した。
「好きな場所に自分で家作って、(塩作りの)窯とか、いろいろやったりね。そういうところで生きていきたいけど、子供もおるし、なかなかね。でも、自分が好きなことを目指しておかないと、そういう人との繋がりもできんくなるしね。本当に自分がやりたいことやれりゃいいけどね。やりたいけどね」
サッカー界で「俺が一番うめえ」を証明するために戦い続けた男が、最高に気持ち良くいられる場所と人を探す第二の人生。
最後に聞いた。
サッカーに未練はないんですか?
「サッカーはどこでもできるけんね、やろうと思ったら。そこら辺でできるし、子どもらも遊んでるし、別にそれでええやん」
常識の枠を超え、久保竜彦は今を生きている。
(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)