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英語力ゼロで単身渡英「生きるのに必死」 挫折を経ての決断、そこで見つけた“大切なこと”――トランポリン・森ひかる

イギリスで気づいた「結果よりも大切なこと」

 東京五輪は苦しさしかなかった。トランポリンをやめたいとさえ思った。イギリスはそんな自分に「もっとトランポリンを楽しんでいいんだよ」と、気づかせてくれた場所、と話す。

「一度、イギリスのコーチに『どうして違う国の代表である私のことも、こんなに親身に思って練習をみてくれるのか』と尋ねたことがあったんです。するとコーチに『メダルを取った歴代オリンピック選手全員の名前を言える?』と逆に質問されました。

 わからないと答えると、そうだよね。でも、五輪までの過程やそこで育まれた友情は、トランポリンをやめてからもずっと残る。結果も大事だけど本当はそれ以外にも大切なことはたくさんあるんだよ、と教えてくれたんです。

 それを聞いて『あ、本当にそうだな』と感じました。

 スポーツの世界は結果で評価されやすいけれど、それ以外にも大切なことはたくさんある。例えば、勝ち負けよりも結果を受けて自分がどう行動するかが大事だし、その経験を経て人として成長できるのだとも感じます。これからはトランポリンを通じて、そんなスポーツが持ついろいろな魅力や良さを伝えられる人になりたい」

 初めて単身で渡ってから約2年半。今年からイギリスを拠点にすることを決めた。今回の渡英は、生半可な気持ちではなく覚悟を決めての決断です。と森。

「だから、練習もめちゃめちゃしています。毎日が、めっちゃ楽しいです」

■森 ひかる/ Hikaru Mori

 1999年7月7日生まれ、東京都出身。4歳から競技を始める。2013年の全日本選手権で、史上最年少の14歳で初優勝。高校1年時に地元を離れ、トランポリンの強豪である金沢学院東高(現・金沢学院高)に転入。金沢学院大学に進学後、18年のアジア大会で個人銀メダルを、同年の世界選手権では日本人史上初のシンクロナイズド金メダルを獲得。19年の世界選手権では日本勢男女通じて初の個人金メダルを獲得した。また、22年の世界選手権では日本人初となる、個人・シンクロナイズドの2種目での金メダルを達成している。五輪は21年東京、24年パリと2大会連続出場。パリ大会では6位入賞を果たす。25年1月より練習拠点をイギリスに移す。

(長島 恭子 / Kyoko Nagashima)

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長島 恭子

編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)など。

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