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英語力ゼロで単身渡英「生きるのに必死」 挫折を経ての決断、そこで見つけた“大切なこと”――トランポリン・森ひかる

トランポリン日本代表として東京、パリと2大会連続で五輪に出場した森ひかるが、「THE ANSWER」のインタビューに応じた。日本のトップ選手として活躍し、2度の五輪出場を経験してきたなかで、今年1月から単身、イギリスに渡って生活をしている。渡英を決意した経緯や、現地での練習を通じて得た気づき、そして新たに見つけた目標――。「めっちゃ楽しい」と語る日々について話を聞いた。(取材・文=長島 恭子)

森ひかる【写真:森田直樹/アフロスポーツ】
森ひかる【写真:森田直樹/アフロスポーツ】

トランポリン・森ひかるインタビュー

 トランポリン日本代表として東京、パリと2大会連続で五輪に出場した森ひかるが、「THE ANSWER」のインタビューに応じた。日本のトップ選手として活躍し、2度の五輪出場を経験してきたなかで、今年1月から単身、イギリスに渡って生活をしている。渡英を決意した経緯や、現地での練習を通じて得た気づき、そして新たに見つけた目標――。「めっちゃ楽しい」と語る日々について話を聞いた。(取材・文=長島 恭子)

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「今、日本のトップレベルの女子選手は、ほとんどが学生です。学生であれば部活動という形で、女子選手同士、切磋琢磨しながら練習できますが、社会人になるとコーチもトレーナーも選手も男性というなかで、一人、練習するしかありません。

 このまま国内で続けていては、選手としても、人としても大きく成長できない、つまらない。世界で戦うならばと考え、イギリスに拠点を移すことを決めました」

 森は自身の成長のため、イギリスでの生活に身を投じた。

「私、英語はまったく話せないんです。だから、会話をするにも翻訳機を通さないとよくわからない、スーパーでもお肉、食材、どれを選べば良いか、何が違うのかわからない、移動は車をレンタルするかバスに乗るかということからのスタート。日本と比べて、生活費はほぼ2倍。毎日、生きるのに必死です。でも、日々の生活や目の前の練習を一生懸命続けることで、選手としてだけでなく人としても成長できますし、それが競技の結果にもつながると考えて頑張っています」

 14歳のときに史上最年少で全日本選手権を制覇した森は、高校時代から日本のトップ選手として世界大会で活躍。トランポリンの世界では誰もが知る存在だった。

 ところが翌19年の世界選手権を境に、取り巻く環境が一変。個人種目で日本人初の世界一に輝くと、東京五輪の金メダル候補として日本中から注目されるようになった。

「急にたくさんのメディアに取り上げられるようになり、内容も『金メダルを取りたいですよね?』という質問を受けたり『(目標は)金メダル』という言葉を言わされたりするインタビューばかりになりました。それまで五輪に出たことがなかった私は、どんどんプレッシャーを抱え込んでしまった」

 大会が近づくにつれ、初めてただのジャンプすらもできなくなった。何度も逃げたい気持ち、プレッシャーに押しつぶされそうになりながら、本大会に出場するも、結果は、中断、予選敗退。苛烈な体験によって打ちのめされた森はトランポリンから距離を置くようになり、『引退』の二文字が頭をよぎった。

「でも、やめる決断を下す最後の一押しができませんでした。なぜ気持ちに踏ん切りがつかないのかと考えたとき、オリンピックは諦めきれない気持ちと、高校時代からの『いつか海外に一人で行ってみたい』という目標を実行していないからだと気づいたんです。引退はトランポリンでやりたかったことをすべてやり切ってからにしよう。そう思い、現役続行を決めました」

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長島 恭子

編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)など。

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