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「違った50代が見えてくる」 海外挑戦中のバスケ元日本一HC、“できない自分”の先に描く未来

契約は1シーズン。「川崎に必要なもの」を探し求めながら今季を全力で戦い抜く【写真:Max Vincen】
契約は1シーズン。「川崎に必要なもの」を探し求めながら今季を全力で戦い抜く【写真:Max Vincen】

全力でやり切ったら「次のステップに行きたい」

 佐藤とルートヴィヒスブルクの契約期間は1シーズン。シーズンが終わった後のことは未定だが、さらに1年、また1年とキャリアを重ねていきたいという思いは当然ある。そしていつかは川崎に戻り、自分の知見をクラブと日本バスケ界の未来に役立てられたらと考えている。

「ブレイブサンダースが日本、そして世界に誇れるクラブになるために必要なものを模索すること。それ以外のことは今のところ考えていないです。自分が経験してきたものが全部空っぽになったと思えるぐらいやりきったら、また次のステップに行きたいという思いはもちろんあります。それが現場の指導なのかユースの指導なのか、チームの仕組み作りなのか……。もちろん、またHCになって『なんだ、このチームは!?』みたいな集団を作りたいという欲もありますが、まずは(ドイツでの)今シーズンを最高のシーズンにしなければ、その先なんてない。毎日毎日、先のことを考えずに、できることを全力でやっていければと思っています」

 ルートヴィヒスブルクはインタビュー当時、総当たりのリーグ戦の1巡目を終え、9勝7敗で7位だった(17チーム中)。「若い選手が多く、準備したことが遂行できれば上位チームにも勝てるし、できなければ下位チームにも負ける」というチームの総合力を上げるべく、コーチ陣で知恵を出し合っているところだという。

「日本ではしていないような特別なことをしているから強いんだろうな、と思ってヨーロッパに来ましたが、実際に若い選手たちと関わってみると、日本もヨーロッパもそんなに変わらないんです。できないことがいっぱいあるし、経験も少ないですし。じゃあ、何が違うのっていうところをなんとか言葉にできるようになって、日本に帰りたいなと思います」

 指揮官として華やかな結果を残した。一方で、振り返りたくないような苦い思いもたくさんしてきた。酸いも甘いも噛み分けてきた40代半ばだからこそできるチャレンジと、そこで得られる財産とは一体何なのだろう。佐藤自身もまだ全容が見えていないという経験が、唯一無二の“おみやげ”として川崎に届く日を心待ちにしながら、遠い場所で戦う彼の健闘を祈りたい。(文中敬称略)

■佐藤賢次(さとう・けんじ)

 1979年12月14日生まれ、奈良県出身。洛南高、青山学院大を経て2002年に東芝ブレイブサンダース(当時)に加入。11年の現役引退までチーム一筋でプレーした。翌シーズンからアシスタントコーチとして指導者の道に進むと、19年にヘッドコーチに就任。5シーズンで4度のチャンピオンシップ出場、21、22年の天皇杯連覇へ導いた。昨季限りで退任すると、昨年7月にドイツのMHPリーゼン・ルートヴィヒスブルクのアシスタントコーチ就任を発表。川崎に籍を置きながら、新たな挑戦への一歩を踏み出している。

(青木 美帆 / Miho Aoki)

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