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「素材は佐々木朗希くらい」 強豪大を蹴り高卒プロへ…相撲部屋も誘った“188cm113kg”日本ラグビー19歳怪童の決断

実は大学にも在籍 セカンドキャリアとして思い描く教員免許取得のため

 本山を「高卒」と書いてきたが、静岡BR入団と同時に静岡産業大学スポーツ科学部に入学した歴とした大学生だ。但し違いは、ラグビーとは関係なく入学して、授業が終われば部活や大学生らしい遊びもほとんどせずチームに戻りプロ選手としての生活にシフトしていることだ。朝6時半からのウェートトレ、昼過ぎから始まるチームミーティング→全体練習、FWのユニット、個人メニューを終えると、再びウェートトレというスケジュールを縫って講義に向かうのが日常だ。大学は仲間とエンジョイする場ではなく、自身がセカンドキャリアとして思い描く教員免許を取得する場と決めている。

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 本山を昨季に続き候補メンバーに選んだのはU20代表の大久保直弥ヘッドコーチ(HC)だ。サイズを生かしたフィジカル、とりわけボールキャリーの能力とスクラムが期待される本山だが、そこにもう一つ、指揮官がユース世代の強化に大きなプラス材料になると期待するのが、その異色の進路選択とキャリアにある。

「プロになろうと、何故そういう選択をしたか。理由を聞けば、皆が応援したくなる。自分が18歳、19歳だったらどうかと考えれば無理だったと思いますよね。現状のコンディションをみても、彼はもうブルーレヴズでシーズン中ですが、大学生の選手たちはオフなんです。本山の場合は仕事としてラグビーを選択して、なおかつ大学も通っている。そして今は、世界を目指してこういう(U20日本代表の)活動をしている。これからはこういう選択肢もあるということを、今の高校生、中学生が持てるのがいいと思います」

 高校時代はバレーボールに打ち込み、法政大学でラグビーを始めた“遅咲き”のキャリアから日本代表の中心選手(LO)まで上り詰めた大久保HCだからこそ、尚更若い時からハイステージのラグビー環境で鍛えられることの重要さを理解している。イングランドでもニュージーランドでも、海外強豪国では高卒でプロへ進む選手が、むしろ多いのが常識だ。

 日本の場合は社会全体が「先ず大学」という環境であるのと同時に、ラグビー界でも大学で経験値を積み、ポテンシャルを身に付けた選手だけがリーグワンでのプレーを許されるのが通常の道筋だ。その中でもテストラグビーで活躍が期待出来る一握りの選手が、プロとしての契約書を提示されている。本山以外のU20代表候補メンバーも、高校時代に花園常連校で活躍して強豪大学に進んだエリート選手たちで構成されている。

 その一方で、大学一部リーグの強豪校でさえ、秋の各リーグ戦では3か月余りで7試合、つまり1.7週間に1試合しか公式戦が無く、同一リーグ(ディビジョン)内でのチーム間の実力格差もかなりある。大学選手権に進出しても1回負ければシーズンオフという、競技力向上の観点からは疑問のある環境でプレーしている。そんな境遇だからこそ、指揮官は本山の存在がフィジカルパフォーマンス以外の部分でも、チームに前向きな化学変化を起こさせる可能性を期待する。

「去年より成長しているのは、体というよりも思考でしょうね。周りの選手と考え方が違う。例えば練習前の準備もそうだし、自分自身が去年怪我したことから何を学んだか。科学や医療という部分ではリーグワンの方が進んでいます。大学はそこまで介入できていないこともありますが、本山を見ると自分の得た知識をしっかりパフォーマンスに同化させている。プロとしての取り組みをしているんです。彼のモデルというのは海外では当たり前ですから。このチーム(U20代表)は大学生が大半ですが、6月にはほぼプロのチームと戦うわけです。でも、それ(学生)を言い訳にしちゃだめなんです」

 プロとしての取り組み方や姿勢を大学生にも落とし込む――。そんな指揮官の思いを受け止めるように、本山自身も静岡BRでの経験も踏まえて、U20代表というチームで自分がどう振る舞うべきかを認識している。

「技術的なところでは、社会人と比べると重さもそうですし、スクラムでPRとHOの体の寄せ(密着度)や、塊となる意識と違いは明らかにありますね。U20のような世代別で、他のチームから選手が集まるチームだと難しさもあります。でも、『自分が自分が』となったら、周りは絶対について来ないと思います。なので、一緒にスクラムを組むHOやPRの組み方に合わせて、それを尊重しながらこのチームとしての形を作っていくようにしていきたいです。そこは『レヴズだからこうする』というやり方はしないようにしながら、自分の経験を伝えたりしています」

 高校時代に花園や他の大会で共に戦ってきた同世代のU20メンバーたちにも、自分の経験を押し付けることはせず、少しでもプロチームの取り組みや自分の経験を伝えたい。合宿では、本山から話を切り出さずとも同世代の大学生たちから、静岡BRでの練習方法や本山の経験を聞かれる時間があるという。

 過去にも高卒でリーグワンチームに進んだ選手も皆無ではない。名門・東福岡高から埼玉パナソニックワイルドナイツ入りしたNo8/FL福井翔太は、日本代表として2023年W杯にも出場している。東海大大阪仰星高から豊田自動織機シャトルズ愛知に入団したSH高島來亜もU19、20日本代表に選ばれている。現在日本代表で活躍するLOワーナー・ディアンズ(スーパーラグビー・ハリケーンズ)、SO李承信(帝京大中退→コベルコ神戸スティーラーズ)も「高卒」という経歴ではあったが、李は大学途中から海外挑戦を模索し、ニュージーランド人の両親を持つディアンズは流経大柏高卒業の時点で既に日本人選手にはないラグビー選手としての身体的な成長をしていた選手だった。本山もU17から代表ジャージーに袖を通し、U19代表でもアジアを舞台に経験を積み、いよいよ世界規模の大会に初めて挑もうとしている。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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