脱サラ→37歳でドラコン世界王者になった最長446y日本人 かつて65kgの細身だった4児パパの軌跡
21歳でゴルフを始めた細身の男は、37歳で世界一の飛ばし屋になった。ドラコンプロの三隅直人(みすみ・なおと)。最長飛距離は446ヤード。世界に出れば、2メートル、100キロ級の猛者たちがいる中、173センチの三隅は肉体改造と技術向上で頂点に立った。その軌跡を紹介する。(取材・文=柳田 通斉)
山口・宇部市在住の三隅直人
21歳でゴルフを始めた細身の男は、37歳で世界一の飛ばし屋になった。ドラコンプロの三隅直人(みすみ・なおと)。最長飛距離は446ヤード。世界に出れば、2メートル、100キロ級の猛者たちがいる中、173センチの三隅は肉体改造と技術向上で頂点に立った。その軌跡を紹介する。(取材・文=柳田 通斉)
山口・宇部市にある1打席のインドアゴルフ練習場。自宅の近くに設けたこの場所で、三隅は日々、47.5インチの長尺ドライバーを振っている。
「じゃあ、軽く打ってみましょうか」
ウォーミングアップ、ストレッチもしていない状態で軽く素振り。その後、放ったショットは鋭い音の後、トラックマンで驚異の数字をはじき出した。
「61.2(m/秒=ヘッドスピード)、88.9(m/秒=ボールスピード)、366.2(ヤード=総飛距離)」
ヘッドスピードとは、ボールを打つ瞬間に出るクラブフェース面のスピード。ある程度、ボールをミートできる男性一般ゴルファーなら40m/秒、ボールスピード60m/秒、総飛距離230ヤードが目安だが、三隅は「軽く打った」だけで規格外の数値を出した。
向き合うと、胸板が厚く、腕も太い。そして、がっしりとした下半身。身長、体重を聞くと「今は173センチ、90キロですね」と返した。納得のサイズだが、「この競技を始める前は65キロで細身の方でした」と打ち明けた。
高校卒業後、地元企業に就職した三隅は21歳でゴルフを始めた。初ラウンドは140台だった。24歳の頃にはレッスンを受けるようになり、その練習場で出会った男たちによって、人生が変わった。
「突然、プロレスラーみたいな人達が入って来てものすごいドライバーショットを打ち始めました。聞くと、隣接するゴルフ場でドラコンの競技会があって、飛び入り参加もOKとのこと。私はその頃から飛ばしには自信があったので、腕試しをしてみました」
記録は333ヤード。だが、三隅は予選敗退となった。
「打ち下ろし、フォローの好条件でこの記録では太刀打ちできないレベルでした。優勝者は417ヤードで当時の日本記録タイでした。他の方々も400ヤード級のショットを打っていましたし、私は『こんなに面白いスポーツがあるんだ。本格的にやってみたい』と思いました」
そして、三隅は競技会に出続けた。6球のうち、決められた横幅(40~60ヤード)内に収まったショットの最長記録を争う競技。まずは通常のドライバーより約3インチ長い競技用の長尺クラブに慣れることから始めた。
「最初はまともに当たらず、30球に1球しか幅の中に収まりませんでした。それでも、試合に出て選手のスイングを研究し、コツも聞いていきました」
まず、悟ったのは「とにかく脱力」「柔らかく握る」だった。
「ヘッドを速く走らせることが飛距離アップの大事なポイントになるので、力みは絶対にNGです」
三隅は練習と研究の積み重ねで「飛ばすコツ」を会得。並行してパワーアップをはかった。
「ヘッドスピードとボールスピードを速くするには上半身の強化が有効ですが、それを支える土台の下半身がないと体勢を崩してしまいます。なので、5対5の比率でトレーニングを心掛け、勤務後に300回懸垂をし、ひたすらスクワットをする日々になりました。ただ、それだけではボディービル系のトレーニングになるので、可動域を広げるためにジャンプやダッシュ系のメニューも入れました」
だが、ローマは一日にしてならず。三隅はボールスピードを1メートル/秒上げるには「真面目にトレーニングをし続けて1年かかる」ことを実感。文字通り、コツコツと13年で13メートル/秒を上げてきた。同時にゴルフ技術も向上させた。
「ミート率を上げることも大切な要素なので、ウェッジやアイアンでボールを捉える練習もしてきました。会場で吹く風向きに合わせられるようにドロー、フェードの打ち分けも覚えました」