大阪大学医学部→公務員→目指した五輪 陸上のために32歳で2度目の大学生に…週7日働く異端の医師の選択
非常勤の医師として働きながら競技を続ける
「華やかで特別」。五輪は憧れ続けた舞台。「達成したいと思うと後に引けなくなる」という性格でひたすら突き進んできた。ただ、葛藤がなかったわけではない。
「クラウドファンディングで支援をしてもらっている時には『自分のやっていることは正しいのかな』と思うこともあったし、『家庭を持ったり、子どもを育てたりしていたら』と考えることもある。日本選手権で7位になって『代表になれる』と思ったのは勘違いだったかも……」
それでも続けてきたのは「自分が胸を張れる人生を歩みたい」という強い思いがあるから。
22年の国家試験に合格し、現在は非常勤の医師として勤務。1度目の大学時代はコミュニケーションの難しさを感じて断念した道で、競技と両立しながら働いている。そして、新たな目標を持って放送大学で大学に再入学した。
週7日勤務と、自ら選んだタフなスケジュールでも、2年前から続けている「1週間で160キロ」の練習は継続。様々な思いを抱えながらも、歩みを止めることはない。
自ら切り開いてきた道について、「自分で考えてやりたいタイプ。『すごい』と言われるけど、普通に働いて自分に合ったやり方でやっているだけ」ときっぱりと言った後で「もし自分のやり方を見て、他の人の道が開けるのなら嬉しい」と控えめに話した。
選択した道が正解かは分からない。それでもひたすら進み続けることで、見えてくるものもある。「五輪は4年に1回。出られないにしても、そこに最高の状態で合わせたいという思いがある」。現役医師にして現役大学生。異色のウォーカーは、挑戦の歩みを止めることはない。
(THE ANSWER編集部・山野邊 佳穂 / Kaho Yamanobe)