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10代で海外サッカーに飛び出す意義とは? 異色の韓国人MFが日本で得た新たな価値観

来日後にボランチ転向「基本が改善され、応用力の幅も広がった」

 日韓のスタイルの違いも体感した。

「相手と1対1になった場合、韓国では身体をぶつけて跳ね飛ばしてでも突破しようとする。でも日本では、パスコースを作ってボールをつなぎながら局面を打開しようとしますよね。梶山陽平のように、ヨーロピアンスタイルの柔軟なテクニックを持つ選手は、韓国にはいません」

 19歳のオ・ジャンウンは、そう語っていた。

 その梶山とは、日韓のU-19代表同士で戦っている。「日本のパスワークは巧みだから気をつけろ」と韓国のスタッフも強調していたという。

 来日してFWからボランチに転向し、プレーも幅も格段に広がった。

「日本に来て基本が改善されたので、応用力の幅も広がった。パスと言えば1種類しかなくて、ただ味方に渡せばいいというものでしたが、状況に応じて緩急を使い分けられるようになりました」

 もともと身体が強く、闘うことを厭わなかったオ・ジャンウンは、日本で繊細なテクニックも身につけ、帰国してから開花した。

「やがて日韓両国のスタメン全員が、欧州のクラブでプレーする日が来るかもしれない。その時は、僕も欧州のビッグクラブで活躍していたいですね」

 13年前に語った抱負である。欧州ビッグクラブでプレーする夢は果たされていないが、10代で渡ったベルギーと日本での経験が、プレーヤーとしての成長を促した。

(文中敬称略)

【了】

加部究●文 text by Kiwamu Kabe

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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