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高卒プロではなく大学に進学した理由 五輪内定のクライミング森秋彩、「文武両道」で得る学びとは

日本スポーツ界の将来を背負う逸材は幼少期からどんな環境や指導を受けて育ち、アスリートとしての成長曲線を描いてきたのか――。10代で国内トップレベルの実力を持ち、五輪など世界最高峰の舞台を見据える若き才能に迫ったインタビュー連載。今回は8月にスイスのベルンで行われたスポーツクライミングの世界選手権女子複合で銅メダルを獲得し、2024年パリ五輪出場を決めた森秋彩だ。後編では10代から世界トップレベルで活躍していた中で、大学進学を選んだ理由について話を聞いた。高校卒業後にプロとして競技に集中する選手も少なくないが、その進路選択の背景には森のクライミングへの変わらぬ純粋な想いがあった。(取材・文=松原 孝臣)

パリ五輪出場が内定した森秋彩。昨年から筑波大学に進学し、文武両道を貫きながらクライミングの技術を磨いている【写真:積紫乃】
パリ五輪出場が内定した森秋彩。昨年から筑波大学に進学し、文武両道を貫きながらクライミングの技術を磨いている【写真:積紫乃】

連載「10代逸材のトリセツ」、森秋彩(スポーツクライミング)後編

 日本スポーツ界の将来を背負う逸材は幼少期からどんな環境や指導を受けて育ち、アスリートとしての成長曲線を描いてきたのか――。10代で国内トップレベルの実力を持ち、五輪など世界最高峰の舞台を見据える若き才能に迫ったインタビュー連載。今回は8月にスイスのベルンで行われたスポーツクライミングの世界選手権女子複合で銅メダルを獲得し、2024年パリ五輪出場を決めた森秋彩だ。後編では10代から世界トップレベルで活躍していた中で、大学進学を選んだ理由について話を聞いた。高校卒業後にプロとして競技に集中する選手も少なくないが、その進路選択の背景には森のクライミングへの変わらぬ純粋な想いがあった。(取材・文=松原 孝臣)

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 クライマー森秋彩は8月上旬に行われたスポーツクライミングの世界選手権の複合で銅メダルを獲得し、日本勢では男女を通じてパリ五輪代表内定第1号となった。

 この試合にとどまらず、スポーツクライミングの第一人者として活躍を続けてきた森は昨年4月、筑波大学に進学。現在は2年生になる。

 クライミングでは、高校を卒業して早々にプロとしてクライミング1本で競技に取り組む選手も少なくない中、あえて両立を図る道を選んだ。

 その意図をこう説明する。

「プロになってそれを仕事にして生活するとなると、やっぱり成績を気にしてしまったりすると思います。成績が直接お金にも関わってくるから、いい成績を残さないと、と考えてしまいます。そっちが軸になるのが嫌でした」

 森は以前、成績を気にするあまり、クライマーとして伸び悩んだ時期を経験した。「楽しいからクライミングをする」という本来のスタンスからずれていることに気づき、原点へと戻り、今日に至っている。今、プロになることは自分のスタンスと異なってくるのではないかという懸念があった。

「それよりも、両立してアスリートをやりたいなと思いましたし、一回大学に行って、いろいろな考え方や幅広い知識、視点の幅広さを手に入れたほうがいい選手になれるんじゃないかと考えました」

 入学して学べたことは、考えていた以上だという。

「最初はスポーツバイオメカニクスを学びたいと思っていたけれど、それ以外もすごく楽しくて、心理学や経済学、倫理学、いろいろな分野を学んでいます。スポーツというのは、今まで自分が考えていたよりも何十倍もいろいろな意味や社会の中での働きかけがあったんだなと思いました」

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松原 孝臣

1967年生まれ。早稲田大学を卒業後、出版社勤務を経てフリーライターに。その後スポーツ総合誌「Number」の編集に10年携わり、再びフリーとなってノンフィクションなど幅広い分野で執筆している。スポーツでは主に五輪競技を中心に追い、夏季は2004年アテネ大会以降、冬季は2002年ソルトレークシティ大会から現地で取材。著書に『高齢者は社会資源だ』(ハリウコミュニケーションズ)、『フライングガールズ―高梨沙羅と女子ジャンプの挑戦―』(文藝春秋)、『メダリストに学ぶ前人未到の結果を出す力』(クロスメディア・パブリッシング)などがある。

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