「なぜ東大から独立リーグへ?」 大学通算1安打、高橋佑太郎の消えなかった野球愛
就活期間に自問自答、胸に刺さったクラブチーム選手からの言葉
入学時から社会人野球への憧れを抱いていた高橋。1日も早いリーグ戦デビューを目指したが、1~2年生の間は苦しんだ。
東大野球部では、午後は自主練習の時間に充てられる。誰にも負けないくらい練習した。特にバッティングに力を入れ、午後10時までバットを握る日々を過ごした。それでも、リーグ戦のベンチ入りは見えてこなかった。「あの選手より練習しているのに、なぜ使ってくれないんだろう」。そう思ってしまった時期もあった。
「今思うと、そのマインドでうまくいくわけない」と笑う高橋。悩みが解消されたのは大学3年の夏ごろ。数や時間、周囲の評価にとらわれていたことに気付けたからだ。解剖学的な理論に基づき、打撃指導を行っている都内施設「REBASE」に月2回通い始めて、ようやく殻を破れた。
体の連動や、速度を出すための仕組みには解剖学的に決まっている部分がある。使われる筋肉、使う関節、固定しなければいけない関節を理解し、体に叩き込んだ。
「練習時間、スイング数がどうっていうのは、上手くなることに関係ないと気付けました」。指導は1回あたり1万5000円。週に1~2回していた塾講師のアルバイト代は大半が消えたが、変わっていく自分が楽しくて仕方なかった。東大での自主練習でも打撃のメカニクスを追究し続け、4年春に念願のリーグ戦メンバー入りを果たした。
好きな野球で、もっと上達できる。卒業後もプレーを続ける意志はより強くなったが、当時の実績・実力で社会人野球に進むことが難しいことも分かっていた。
今年3月。就職活動の時期とあり、高橋もエントリーシートを数社に送ったが、面接を受けることはなかった。
「自分は野球の何が好きなのか、なぜやりたいのか?」
丸2日間、真剣に自己分析をした。SNSで知り合ったクラブチームの選手にも意見を聞いた。「野球を続けたい気持ちを半端に持ったまま就職しても、後悔する」。その言葉が最も胸に響いた。
「それまで、他人の評価で行動を決めていたなと考えさせられました。じゃあ野球はやらなくてよくないかとも考えたんですが、それでもやめようとは思わなかった。自分がうまくなっていく、自己実現していくためにやっているんだと。そこで他人の練習がどうとか、あまり気にならなくなりました」