アスリートと社会を繋ぐプラットフォーム 今、話題の団体「APOLLO PROJECT」とは
受講生が「競技の5年後に向けた戦略」を企画立案し、プレゼン大会を実施
「APOLLO PROJECT」が目指すのは、アスリートの価値を高め、その価値を社会に還元するプラットフォームとなること。まず第一歩として今年1月、アスリートたちの「学びと実践機会」をプロデュースする場となる「A-MAP(Athlete Mindset Apollo Program)」を開講した。
A-MAPとは、現役アスリートと元アスリートを対象とした1年間の学習プログラムで、受講生は自分やスポーツが持つ価値を、実際の社会とどう結びつけ、活用していくかを学んでいく。1期生となった11人(現役5人、引退6人)の受講生は、メンターやアドバイザーに助言を仰ぎながら毎週ミーティングに参加。各界で活躍する人物の講義を受講したり、エアキャンパスに課題図書や映像講義の気付き、学びを書き込んだり、提携大学(ビジネス・ブレークスルー大学)の講義を受けたり、グループでオンラインイベントの企画立案?実践に取り組んだり、取り組むべきことが満載の毎日を過ごしながら自身の可能性を広げている。
基本理念となるのはマインドセットを一丁目一番地とした「学びと実践」。A-MAPでは「学び」を机上の空論で終わらせるのではなく、具体的なプランとして一歩踏み出す「実践」までをサポート。提供するプログラムは個々が独立している“点”の寄せ集めではなく、1年を通じて“線”として繋がりを持つように設計した。そのプログラムの一環として先日、受講者は「あなたの競技の5年後に向けたグランドデザイン(戦略)を考えてください」というテーマで、スポーツを通じた社会課題の解決策を考え、プレゼンを実施した。
7月の予選ピッチを勝ち抜いた5人が、それぞれのグランドデザインをブラッシュアップし、8月23日の本戦ピッチに出場。元ラグビー日本代表の大野均さんが発表した「スポーツの力を福島の元気に」という企画がMVPに輝いた。開講から約7ヵ月の学びを経て、大野さんをはじめ受講者全員のプレゼンの中に「確実に成長の跡が見えた」と2人は口を揃える。
受講者が立てたグランドデザインを高く評価する一方、準備段階では担当メンターやラーニングアドバイザーが、そしてプレゼン当日には審査員を務めた理事や有識者たちが、理想論に偏っていないか、実際のビジネスプランとして成り立つのか、忌憚のない意見をフィードバックした。「どうしてもアスリートはちやほやされがちなので、僕らがちゃんとフラットで忖度のない、時には耳の痛いフィードバックもできる存在にならないといけないと思います」と山内さんは言う。
10月からは第2期が開講。現在も受講者を募集しているが、すでに1期生の口コミや噂を聞きつけたアスリートたちから多数の応募があった。自身の経験も踏まえ、廣瀬さんはこう現役アスリートにメッセージを送る。
廣瀬「そもそも、なんで今の競技を選んだのか、どういう生き方をしていきたいのかを考たり、普段から社会と接点を持っていたりする方が、現役生活を送る上でも生きるし、引退後のキャリアにも通じてくる。さらに、引退して1年後よりも現役の方が絶対に影響力が大きいので、早めに動いてファンや周りの人たちに自分のやりたいことを知ってもらうのも合理的。自分が歩みたい方向を持ちながら引退を迎えた方がメンタル的にもヘルシーだと思うので、興味がある人はぜひ参加してもらいたいですね」
山内「僕は2年の現役生活で、社会から取り残される不安な気持ちがありながらも、試合に出て勝利給を稼いだり年俸を上げたりすることしか考えられませんでした。当時の自分に言いたいことは山ほどあります(笑)。だからこそ、今の現役選手にはもっと先を見てほしい。アスリートとしての価値を考えた時、競技力のみを上げれば価値が上がるのか。そこにまず問いを立ててもらいたいですね。
リーダーシップやチームビルディング能力も価値を上げる要素かもしれない。何のために日本代表になりたいのか、世界でプレーしたいのか、その目的を自分に問いかけることで見えなかったものが見えてくるんじゃないかと。もう一つは、自分の競技以外の人たちと接点を作ること。他競技の人やスポーツ界の外の人にはどう見えているのか、違う視点からの価値を知ると、漠然とした不安が解消されたり、不安の原因が明確に見えたりするんじゃないかと思います」