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負けた時に笑える人間になれ 世界を熱狂させるBMXのカリスマ・内野洋平という生き方

永遠の“変化球作り”…今思うBMXの魅力「誰かのマネしても、おもしろくない」

「気づけば、周りに『もしかしたら世界一、獲れるんじゃない?』と言われ、師匠にも『獲れるから絶対、諦めるなよ』と言われ、言葉通り、諦めずに頑張っていたら、それなりに話題性のある一人のライダーとして成長していました」

 一つ、幸運だったことがある。内野の成長に合わせるように、BMXの競技自体が発展を遂げていたことだ。気づけば、5万円だった賞金は50万円になり、世界的な人気を誇るXゲームに採用され、雑誌、テレビに取り上げられる選手も続出。環境は目まぐるしく変わっていた。内野自身もユニクロのCMに出演するなど、トップライダーに飛躍していた。

「BMXが世の中に浸透していくのは、自分にとってラッキーくらいの感じ。好きで始めたら、時代が変わった。気づけば生計が立てられるようになって。BMXが五輪競技にもなった。ほとんどのライダーが、いつかそんな時代が来るとも思っていなかったから、驚きの方が大きいです」

 こうして、人生の半分となる17年をBMXに注ぎ込んできた。「今思う、BMXという競技の魅力を何なのか」。そう問うと、「決められた線路がないというのが一番ですね」という答えが返ってきた。

「プロ野球で一番になったら、次はメジャーリーグに行けということはない。始めた頃はプロもないし、お金が稼げるわけでもない。でも、本当に好きでやっているんだなって実感できるから、それが一段と良かった。すべてが自由。やりたい技をやろうと思って挑戦して、できれば評価されるし。野球なら、新しい変化球をずっと作っている感じですかね」

 カーブもシンカーもスライダーも、もともと作った人がいる。でも、BMXは常に“変化球作り”を求めている。だから、若い選手には、よくこんなことを話す。「作っていく楽しみは最高だから。誰かのマネしても、おもしろくないでしょ」と。実際に、内野は現役選手でありながら、自分で世界大会を作った。今や賞金も含め、世界一の大会だ。

 もちろん、競技者として一流の矜持もある。内野らしい哲学が垣間見えるのは、BMXを始めてから今まで「大会で泣いたことは一回もない」ことだ。「勝負の大会で全然ダメでも泣いたことがないんです」と豪快に笑う。

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