負けた時に笑える人間になれ 世界を熱狂させるBMXのカリスマ・内野洋平という生き方
失敗は数万回、負けた時こそ笑える人間に…「大事なのは過程、それが裏切らない財産」
「僕にとって大会は発表会に過ぎない。大事なのは発表会までの過程で、それが何も裏切らない一番の財産。大会で出せなかったから、財産が死ぬわけじゃない。そこに向かって本気でできたか、できないか。自分は負けても失敗しても泣きもしないし、なんなら誇りに思っている。だから、笑うことの方が多いですよ。『あー、こんだけやってあかんかったか!』って」
負けた時こそ、笑える人間になる。それこそが、世界一であり続けられる理由なのだろう。「今まで練習では何万回と失敗してきた。でも、目標を設定したからには、一番かっこいい自分を見せるために一分一秒を大事にしなきゃいけない。だから、負けた時に笑っていられるって、めちゃくちゃ大事だと思うんですよ」と力説した。
こうして、BMXの世界で頂点を極めた内野だからこそ言える、興味深い哲学がある。「一流と二流の違い」だ。
「僕にとっては『マネする人とマネされる人の違い』かな。僕らの業界は、一流はマネされる人。マネする人はずっと二流。自分で新しいものを生み出し、周りがマネしてくる存在。だから、自分の常にぶれない目標があるんです。自分の夢は何かと聞かれると『人の夢になることが自分の夢』。人の夢になれる、あの人になりたい。そう言われる人になるのが、僕の夢かな」
今季は9月から海外で本格的にシーズンイン。11月3日からは3日間、内野が創設した大会「FLAT ARK」がフラットランドとスケートボードによるエクストリーム大会「ARK LEAGE」に生まれ変わり、神戸メリケンパークで世界トップ選手とともに参戦する。果たして、今シーズン、そして、35歳の未来をどんな風に描いていくのだろうか。
「もうベテランですからね。でも、ほかと比較しようがない競技。何歳までやれるかわからないし、リミットも決めてない。乗れなくなったら辞めます。チームスポーツで試合に出る出られないは関係ない。体が動く限りは負けても出続ける。その方がカッコいいし、自分っぽいなって。キングカズさんじゃないけど、年を取っても下のやつと戦うのもかっこいいなと思うんですよね」
そう言った後で、少し間を置いて笑った。「だから、体が動く限りは見せたいですけどね、気合を」。表情は、いつまでも夢を駆ける少年のようだった。
◇内野 洋平(うちの・ようへい)
1982年9月12日、兵庫県生まれ。35歳。幼少期は水泳、モーグルで活躍。御影工2年からBMXを始め、05年に史上最年少の22歳で日本選手権優勝。08年に世界選手権初優勝。12年から2年連続で世界年間グランドチャンピオン。12年はWORLD TEAM G-SHOCKアスリートとして日本人BMX選手で初めてG-SHOCK社と契約するなど、数々のスポンサー契約を結ぶ。ユニクロのCM、ファッション誌など多方面でも活躍。176センチ、62キロ。