女子アスリートの将来に一石 7人制ラグビー日本代表主将が自分でチームを作ったワケ
画期的な狙いをもって始動する新チームのコンセプトは
――新チームのコンセプトを説明してください。
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「選手たちがより良いデュアルキャリアを実現させるためチーム。女子ラグビーだけの問題ではないですけど、アスリートたちの共通課題としてデュアルキャリアをどう構築していくかというのがある。そこの部分を解決していくことをチームのミッションにしています。
現役の間に資格取得だったり、チーム運営のインターンとしての経験を積んだり、引退した後のセカンドキャリアにつながる活動もしていくことを必須事項にして、そのことに対する金銭的、時間的サポートをしていく。具体的には、健康運動指導員、スポーツトレーナー、ヨガインストラクター……もちろん、スポーツチームなどの運営に携わっていくこともそのひとつです」
――福岡・久留米を本拠地に選んだ理由は?
「九州はラグビー文化が根付いていて、7人制、15人制問わず、女子代表にも多くの人材を輩出してきた歴史があります。にもかかわらず、大学進学、就職などにより、人材が九州外に流出してしまっている。
私自身、福岡には縁もゆかりもなかったのですが、2018年、2019年と、北九州で女子のワールドセブンズシリーズ(7人制ラグビー最高峰の世界サーキット)の大会が行われ、その時に村上先生(CEO)などと相談する機会があって、九州を本拠地にした社会人女子ラグビーチームを立ち上げることで、九州で育った“ラガール”たちが地元で本気でラグビーに打ち込める環境をつくりたいという思いが強くなっていきました。
中でも、久留米市は医療機関が多く、久留米大学は医学関連カリキュラムが充実していて、デュアルキャリアに関しても多岐に渡る選択肢を提示できるし、練習も大学の施設を使うのでプレーする選手たちの怪我のリスクも減らすことができるといった環境面でのメリットが多くあります」
――「中村さんの『女子のプロラグビーチームをつくりたい』という熱意と信念がすごかった」(オフィシャルパートナーである久留米大・永田見生学長)という声が、上がっています。
「歴史的にみて、日本の女子ラグビーはいろんな障壁を乗り越えてきた。『女子がラグビーなんてやっていいの?』『怪我もあるのに何のためにやっている?』『すぐに日本代表になれる?』など、いろいろと心無い言葉を浴びながら、それでも先輩たちがつないでくれたから、いま自分たちがプレーできている。だからこそ、女子ラグビーの価値を上げていく存在にしたいという思いは強いですね。
いまは『ラグビーをやりたい』という思いだけで所属企業を決めて、ラグビーを引退した後にその企業に残るイメージがつかないという選手が多いのが現実。なので、チームにいる間に引退後も仕事としてやっていきたいことを見つけて、それがナナイロの提示するものとマッチングすれば、女子ラグビー選手たちのデュアルキャリア問題の解決になるのではないかと。
そして、ゆくゆくはチームとしてラグビー選手としてのプロ契約ができるように持っていきたいとも思っています。将来的に夢のある形にしていきたいですし。私が知る限り、現状では日本人プロ選手はいません。海外出身選手の中には日本のチームとプロ契約をしている選手が何人かいると思いますが、それでも、太陽生命セブンズ(国内最高峰の女子セブンズサーキット)に参加しているチームの中でプロ選手を擁するのは3、4チームくらい」