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アフリカに渡った元Jリーガーの執筆コラムvol.2「ザンビア移籍の舞台裏をお話します」

契約期限ギリギリに中町(左)が契約書にサインした当時の様子【写真:本人提供】
契約期限ギリギリに中町(左)が契約書にサインした当時の様子【写真:本人提供】

綱渡りの状況を経て決まったザンビア移籍の舞台裏

 ザンビアで複数のチームと直接交渉するためです。正直、この交渉はお世辞にも大成功とは言えないお粗末なものでした。

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 約束の時間にチーム関係者が来ないのは当たり前。「今、約束の場所に向かっている」という言葉から結局、その日会うことすらできない日々が続きました。滞在期間を延長し、ザンビアにいたものの、全くと言っていいほど進展せず、失意の中で帰国することになります。

 この時点で12月20日過ぎ。マリノスからも「早く答えを出してくれ」とザンビア滞在中に言われていたので、かなり待ってもらったのですが、まだマリノスにはアフリカに行って、現地のチームと交渉していることを伝えていませんでした。流石にこの時期まで引っ張って、その理由と自分の想いを伝えないのは筋が違うと思い、チームの事務所を訪れました。

 しかし、このタイミングで何が起こったかというと「Mr.Nakamachiはどこにいる? 契約できるかもしれない」というザンビアのクラブからの一報でした。

 ポイントは「契約できるかもしれない」という曖昧なものだったということ。マリノスには事情を説明し、「12月31日までは待つ」と言ってもらいました。同時に、その日を過ぎた瞬間にマリノスから受けているオファーを破棄するものとする、という書面にサインしました。

 この1週間はかなり難しい時期でした。ザンビアのチームには「自分に残されている時間はないんだ。正式な契約書を出してくれ」と強く言い続けたものの、なかなか出てこない。やっと仮契約書が送られてきたのは、期限が残り2日に迫った12月29日。給料や契約金、契約期間が書いてある文書ですね。ただ、チームスタッフはこう言ってきました。

「1月3日に役員会で会議してこれを最終決定する」と。

 これは、全く意味のない契約書ということ。金額から何から全て変わってしまうということ。しかし、私は決断しました。ごく身近な人しか知らなかったのですが、ほとんどの人が反対していたんじゃないかと思います。結局、マリノスに移籍の旨を伝え、サポーターの皆さんにもお別れを告げました。新チームとの口約束だけを頼りに。

 1月初旬に渡航するはずが、チーム側から就労ビザの問題で待機を求められ、日本で待ちましたが、ここでも待てど暮らせど一向に話が進む気配がありません。そして、私は1月26日、勝手にザンビアに向けて飛び立ちました。

 現地ではチーターの散歩をしたりしながら、身体を動かしていたのですが、1月31日に交渉中のチームから慌てた様子で連絡が来ました。この日が移籍ウインドーが閉まる期日だから、急いで契約書にサインしてサッカー協会に登録しなくてならないと。これ、自分の判断でザンビアに来てなかったら契約できなかったということです。

 移籍というのは前所属チームから新チームに籍を移す手順を踏まなくてはならないため、ここでもマリノスと日本サッカー協会の方に深夜まで起きてもらって対応してもらいました。なにせ、時差が7時間あるので。

 このような綱渡りのシチュエーションを経て、アフリカのザンビア共和国での新しい挑戦が始まることになったわけです。

(12月掲載の第3回に続く)

(ZESCOユナイテッドFC・中町 公祐 / Kosuke Nakamachi)

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中町 公祐

1985年9月1日、埼玉県生まれ。高崎高(群馬)を経て湘南に入団。同時に慶大に入学し、08年から2シーズンは大学でプレー。10年に福岡に加入し、12年に横浜Mに移籍。13年は天皇杯優勝に貢献し、同年のJリーグ優秀選手賞を受賞。翌年から選手会長に就任した。19年1月からザンビアのZESCOユナイテッドFCに移籍。同国ではサッカーと医療でアフリカ地域支援するNPO法人「Pass on」(https://pass-on8.net/)の代表理事を務め、幅広い活動を行っている。174センチ、74キロ。Jリーグ通算341試合出場、35得点。

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