なぜ、大野将平は笑わないのか 五輪連覇を目指す男が語る“畳の上の美学”
東京は「2つめの集大成」も…「今から何が起こるかわからない」
では、勝利の瞬間に沸き上がる感情とはどういったものなのだろうか。
【特集】日本のエースはなぜ畳に上がるのか 「勝ち続けることで違う境地に」 / 男子柔道・大野将平インタビュー(GROWINGへ)
「ホッとするという気持ちが一番最初に来ます」と頷き、さらにこう続ける。
「自分自身、柔道界でのキャリアも一番上で、現役の中でも結果を残している方だと思う。勝つのが当たり前だと思われているのは、そこまで高められたということ。誇らしいし、光栄に思っている。しっかり最高の準備をして、試合をやって、何事もなく畳を下りて帰るのが一番いいと思っています」
泰然自若とする若き王者だが、大舞台を見据えても、ピンと伸びた姿勢が乱れることはない。
「当然、周りからの注目度も高い。リオも集大成という思いがあったので、その意味では一緒ですが、東京で競技を引退するわけではないですから。道は続いていく。まだまだ強くなれる。なので2つめの集大成ということになるでしょうか。
ただ、今から何があるかわからない、もっといえば今年怪我をして来年ダメになるかもしれない。色々なものと戦いながら、来年を迎えることになる。だから、簡単に東京五輪という言葉を口にできないというのはあります。何が起こるかわからない。一日一日、全身全霊をかけて生きていくしかないですね」
王者となってなお、悲壮なまでに現実と向き合う。求道者のようにストイックに、柔道と向き合い続ける男にとっての畳に上がり続けられる原動力は一体、何なのだろうか。
「モチベーションは果たして維持できているのかなと……。改めて考えると、そう思いますね。最近はインタビューなんかでも言いますけど、『柔道が楽しい』と思うことはありません。本当に楽しくないですからね。だから、辞めるとはならないんですけど」