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五十嵐カノアに懸かる国際的発展の期待 上昇カーブ描く先に五輪メダルの夢

五十嵐カノアは世界トップレベルの選手も驚く成長力を見せている【写真:Getty Images】
五十嵐カノアは世界トップレベルの選手も驚く成長力を見せている【写真:Getty Images】

カリスマ的サーファーも驚く成長速度、東京五輪は「新しい夢」

 若き日本人サーファーの成長速度は、世界のトップ選手達をも驚かせている。通算7度のワールドチャンピオンに輝いた実績のあるカリスマ的存在の女子サーファー、ステファニー・ギルモア(オーストラリア)は「すごいスピードで成長している。アメリカの環境と日本の文化で育ったカノアがオリンピックでメダルを取れば、ロックスターのような人気者になるかもしれない。サーフィンの国際化にもつながる」と期待する。QSを主戦場とするハワイ出身の前田マヒナも「カノアが目立つ活躍をしてくれて、日本へのリスペクトを上げてくれている。私もカノアに続きたい」と背中を追いかけている。

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 世界中のサーファーにとっても、東京五輪は大きな刺激となっているようだ。例年であれば、年間王者のタイトル獲得をモチベーションにする選手が多い中、今シーズンは五輪出場を目標に掲げるサーファーが多かった。ギルモアは「国際的なスポーツとして認知される素晴らしいチャンス。サーフィンを見たことのない人たちがファンになってくれれば、人気向上につながる。13年間、ツアーで戦ってきて多くのタイトルを獲得して新しい刺激を求めていた。目の前にオリンピックで勝つ、という新しい目標ができて生まれ変わったような気分。新しい夢に挑戦できる喜びがある。もっとハードにトレーニングするためのモチベーションになっている」。

 またギルモアは、この競技が他のスポーツに比べて過小評価されていると感じているという。「多くのサーファーは謙虚。自然を受け入れ、自分の周りのことに対してあまり執着しない。そういったカルチャー的な要因も根底にあるのかもしれない」と指摘する。バスケットボールのレブロン・ジェームズ(米国)やテニスのロジャー・フェデラー(スイス)といったスター選手は誰もが知っているが、ワールドチャンピオンに11度輝いて史上最高のプロサーファーと言われるケリー・スレイター(米国)の一般的な知名度は低い。ギルモアは「ケリーはこの世代のレジェンド。でも、マイケル・ジョーダンのような伝説的なアスリートに比べると、過小評価されている。サーフィンは毎回、違うコンディションの中で最高のパフォーマンスを出す必要がある。その意味でもケリーが成し遂げてきたことはとても大きな意味がある」と熱弁する。

 だからこそ、スポーツ最高の舞台である五輪でサーフィンを多くの人に見てもらうことは非常に大きな意味があると、ギルモアは考えている。「将来、たとえば中国やどこか寒い国出身のトップサーファーが現れるきっかけになるかもしれない」。世界各地の海を舞台に様々な国籍の選手が競い合っているように、元々グローバルなスポーツ。今回の五輪をきっかけに「観るスポーツ」としてサーフィンの国際化が加速することを期待したい。そして、世界を舞台に成長し続ける五十嵐が、そのきっかけになる可能性があるのは、日本人にとってうれしい限りだ。

(岡田 弘太郎 / Kotaro Okada)

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