パスの出し手と受け手の理想形 元W杯戦士も唸る「ハート・トゥ・ハート」理論
浜本の信念「相手の心を感じ取れなければ、良いパスワークは生まれない」
浜本が子供たちを思いやるように、パスも受け手の気持ちを読んで送る。それが持論だ。
元日本代表MFの森島寛晃は、鮮明に覚えている。
「パスは思いやり。片想いの気持ちを伝えるように、ってよく言っていました」
今でも森島は、正月になると家族で浜本邸を訪れ、酒を酌み交わすと安心して居眠りをしてしまうそうだ。
最近まで大河FCは、全員が坊主だった。ある時、浜本は子供たちに聞いた。
「どうだ、お前たち、モテるか」
「モテな~い」
子供たちの声が揃ったのを聞いて、浜本が話し始める。
「いいか、お前たちがモテないのは坊主だからじゃないぞ。女の子は、男の子の見てくれじゃなく、一生懸命頑張っている姿に魅かれるんだ。でも例えば、浜本くんが好きや、というサインを感じ取れなければ話にならない。サッカーも同じだぞ。パスの出し手と受け手は、ハート・トゥ・ハートの関係でなくてはならない。相手の心を感じ取れなければ、良いパスワークは生まれないんだぞ」
観察力と巧みな話術。相手の状況を察知して、適切な一手を打つ。
「あれだけいろんな人たちを魅きつける。僕もあんな人になりたいですよね」
森島の弁である。
(文中敬称略)
【了】
加部究●文 text by Kiwamu Kabe