「凡人が天才を討つ」 クライミング藤井快、若手中心の世界に待ったをかける経験値
若手と一線を画す26歳、クライミングをやる意味は「ただ楽しいから」
社会人になったばかりの15年には、仕事と競技の両立が難しく引退も考えたが、「辞めるにも辞められない」と結局続けた。そんな藤井にとってスポーツクライミングをやる意味とは何なのか。
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「う~ん、意味は…ない気がします。なんでですかね。正直、あまり理由がない。辞める理由もないし、続ける理由もないし」
アスリートであれば、勝ちたい、恩返しをしたい、夢を叶えたい、強さを証明したいなど浮かぶもの。これらがモチベーションアップに繋がることもある。一線を画す藤井のスタイルが悪いわけではないが、珍しいのが事実だ。本質的な問いに絞り出すように語った。
「使命感や義務は感じておらず、好きで楽しくて登っています。僕らがやっている競技って、対人種目でもないですし、結果として人と競ってはいますけど、(基本的には)人と競っているわけではない。自分がいいパフォーマンスをすれば結果がついてくる。やっぱりあまり深い意味はないですね。ただ楽しいからやっていて、できないのが悔しいからやっていて」
中学入学直後に大きな壁と出会ったあの日と変わらない。「楽しい」という素直な少年心でここまで来た。「紆余曲折ありましたけど、やっぱりそこに行きつきますね。結果的にそういうもんかな。いろいろ巡って原点回帰することはあります」と笑った。
世界選手権で代表内定しなかった選手は、11月の五輪予選(フランス)、来年4月のアジア選手権で選考。有資格者が2人未満、または3人以上の場合は同5月の複合ジャパンカップで決まる。多くの選手が人生を懸けて上がる舞台だが、藤井は東京五輪のさらに先を見据えている。
「ここまで来てしまえば、やっぱり僕は(競技の)普及もさせたいし、コーチもしてみたい。かと言って、ジムスタッフでやりたいこともまだいっぱいありますし、ルートのセットもしてみたいし。やりたいことはたくさんありますね。その辺りは引退してから考えたいなって思います」
風に身を任せるように始めたクライミング人生。今もなお吹き続けるそれに乗り、東京五輪の先は古今東西に向かっている。
(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)