世界王者の兄を超える夏…比較の宿命を歓迎する20歳弟の決意「僕は楢崎明智なんだ」
東京五輪新種目のスポーツクライミング世界選手権(東京・エスフォルタアリーナ八王子)が11日から開幕し、盛り上がりを見せている。五輪代表は男女各2枠ずつあり、今大会7位以内の日本人最上位者が内定する。2018年世界ユース選手権2冠の楢崎明智(めいち・TEAM au)は、世界王者の兄・智亜(ともあ・TEAM au)と比較されることを歓迎し、五輪切符獲得を狙う。
東京五輪代表を懸け、スポーツクライミング世界選手権が11日開幕
東京五輪新種目のスポーツクライミング世界選手権(東京・エスフォルタアリーナ八王子)が11日から開幕し、盛り上がりを見せている。五輪代表は男女各2枠ずつあり、今大会7位以内の日本人最上位者が内定する。2018年世界ユース選手権2冠の楢崎明智(めいち・TEAM au)は、世界王者の兄・智亜(ともあ・TEAM au)と比較されることを歓迎し、五輪切符獲得を狙う。
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「トモ君」と呼ぶ3学年上の兄は、今季3年ぶり2度目のW杯シーズン総合優勝を飾った東京五輪の金メダル候補だ。俊敏な動きで壁を這いあがる姿は国内外で「智亜スタイル」「忍者スタイル」などと称され、海外選手がまねようとする“流行り”にもなった。そんな世界一の兄を、弟は「凄く尊敬している人でもあるし、一番仲のいい人でもある」と語る。こう思えるまでには紆余曲折があった。
クライミングが東京五輪の追加種目になった頃、世界で成績を残す智亜はメダル候補として一躍脚光を浴びた。「楢崎兄弟」として明智も“セット”にされることも少なくない。まだ高校生になったばかりの頃。期待の大きさに技術が追いついていないのも当然だった。
「3、4年前ですかね。意識していた時期もあった。僕がまだW杯に出られない時に(兄は)優勝とかしていたので『明智も行くだろう』とか言われていた。そういう時にプレッシャーを感じていた」
結果を残していくことで、「僕は僕」と少しずつ意識が変えていった。後を追うようにクライミングを始めた小学2年の終わりから、兄は切磋琢磨できるライバルであり、互いに長所も短所も理解し合う仲間でもある。比較は兄弟間だけでなく、現役時代に活躍した偉大な選手の子どもは「〇〇2世」と呼ばれ、周囲から親と比べられることも多い。「深く考える意味はない」。明智は一人のアスリートとして、いつしか強い選手との比較を歓迎するようになった。
「どの選手も一緒の舞台で戦っていたら絶対に比べられる。競技をやっている以上、当たり前のことなので、それが兄か兄じゃないかの違い。今は別に比べられるのはいくらでもウェルカムですよ。やっぱり楢崎智亜の弟じゃなくて、僕は楢崎明智なんだってしっかり見せつけてあげれば、比べられてもあまり気にすることじゃない。
あいつはこれができて、自分はこれができないとわかった方が成長につながる。(レベルが低いと)比べられないし、その土俵にいるだけいいことだと思います。結局、順位を競うもの。順位を競っているということは誰かと比べていることなので、気にしない。全く嫌なことではない」