「五輪決勝はケンと戦いたい」 空手界に君臨する“レジェンド”と“プリンス”の物語
思いがけないレジェンドの言葉「オリンピックの決勝はケンと戦いたい」
「気まずいなって思いながら携帯電話をいじっていたら、いきなりアガイエフが自分の携帯を僕の目の前に出してきたんですよ。何かと思ったら赤ちゃんの写真で『誰?』って聞いたら、『俺の昔の写真だ』って。『かわいいね』って、僕が拙い英語で頑張って喋ったら、そこからすごく喋ってくれるようになったんです。その時に『今回はお互い優勝できなかったけど、オリンピックの決勝はケンと戦いたい』って言ってくれたのが、一番印象的でした。本当にライバルというか、自分を一人の選手として認めてくれたのかなと、すごくうれしくて。僕も尊敬している人と五輪決勝で戦いたいですね」
気まずい時期もあったが、アガイエフに対して抱く憧れと尊敬の気持ちは変わらない。
「僕の原点です。あの人の組手を真似て、なんで勝てるんやって研究して。30歳を超えて、これまで数々の伝説を作りながらなお戦い続ける。“生きる伝説”なんて呼ばれて、カリスマ性もすごい。コートに入ったら全力で叩きつぶしにいくんですけど、勝ち負け関係なく尊敬できる選手はアガイエフだけですね」
2020年8月7日、東京オリンピックの空手・組手75キロ級決勝を目指し、西村とアガイエフはそれぞれ自己研鑽の日々を積む。そして、二人が願う通り、決勝で顔を合わせることになった時、年の離れたライバルの戦いはクライマックスを迎える。
(THE ANSWER編集部・佐藤 直子 / Naoko Sato)