空手世界王者・西村拳が考える「心・技・体」のバランス「精神も大事。でも…」
「世界を旅しながらいろいろな国の選手と交流して指導したり、セミナーを開いたりしたい」
「経験を積んでから、最終的に指導者になりたいと思っています。いつか分からないですけど、現役を引退した後は、世界を旅しながらいろいろな国の選手と交流して指導したり、セミナーを開いたりしたい。自分は若くて経験がないので、引退してすぐに指導者になっても技術しか教えられない。ただ、空手は礼儀作法だったり、人間形成だったり、そういった部分も大事になるので、自分はまだまだ教えられる器ではありません」
武道でもある空手では「心・技・体」の三位一体が重んじられる。「道」を極める武道で最も大切なことは「心(=精神)」と考える向きも多いが、西村は「3つ揃って初めて生きる」と考えている。
「精神も大事です。でも、技術面も体力面も充実しているから、精神面が落ち着くこともある。自分の体はしっかり当たり負けをしない、技術は誰にも負けないとなれば、自然と自信が生まれる。逆に、精神が強くても、技術や体が追いつかなければ、単なる勘違いだと思うんです。だからこそ、3つ揃って初めて生きる。ただ、試合で最後の最後にはメンタルが大事になることもあります。残り20秒、10秒で体力が切れてしんどい、本当にヤバイってなった時に、もう一歩の踏ん張りが利くかどうかは精神の部分。技術があってもへこたれてしまったら、やられてしまいますから」
今まさに、世界を代表する猛者たちとの戦いの真っ只中に身を置くからこそ、「心・技・体」のいずれも欠くことができないと痛感している。西村が世界トップと鎬を削りながら、さらに高みを極めようと繰り返す試行錯誤や、東京オリンピックで金メダルを目指す挑戦は、いつの日か指導者になった時、次世代の子ども達に還元されていくはずだ。
(インタビューは3日連続掲載、最終回の明日28日は西村とアガイエフのライバル関係)
(THE ANSWER編集部・佐藤 直子 / Naoko Sato)