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走りの学びが仕事に生きる? 元五輪スプリンターが“大人のリレー研修”で教えたワケ

元五輪スプリンターが、一般企業の社会人に走りを教える。7日、異色の試みが東京・豊洲で行われた。指導を務めたのは、アテネ五輪1600メートルリレー4位の伊藤友広氏。参加者は再生医療を手掛ける企業「セルソース」の社員12人、20代から60代の男女が集まり、約2時間、元陸上ハードル選手の秋本真吾氏らとともに走りと向き合い、50メートルのタイム短縮に挑んだ。

イベントに参加した「セルソース」社員、最後は笑顔で集合写真に納まった【写真:編集部】
イベントに参加した「セルソース」社員、最後は笑顔で集合写真に納まった【写真:編集部】

アテネ五輪1600mリレー4位・伊藤友広氏が「セルソース」社員に走りを指導

 元五輪スプリンターが、一般企業の社会人に走りを教える。7日、異色の試みが東京・豊洲で行われた。指導を務めたのは、アテネ五輪1600メートルリレー4位の伊藤友広氏。参加者は再生医療を手掛ける企業「セルソース」の社員12人、20代から60代の男女が集まり、約2時間、元陸上ハードル選手の秋本真吾氏らとともに走りと向き合い、50メートルのタイム短縮に挑んだ。

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 発端は“山の神”から生まれた。伊藤氏と秋本氏がこの春から指導する男子長距離・神野大地の所属先がセルソース。同い年だった同社の裙本(つまもと)理人社長が、スプリント指導のプロ組織「0.01 SPRINT PROJECT」で小学生のかけっこ教室、トップアスリートのスプリント指導を手掛ける2人の理念に共鳴し、社内の研修に「リレー研修」として走りを取り入れたことが契機となった。

 伊藤氏はまず、座学から開始。走りの速さは「ピッチ×ストライド」の掛け合わせからなることを説明した。「サニブラウン選手は1秒間のピッチは4.3回、桐生祥秀選手は4.7~8回。ボルト選手のストライドは3メートル弱と言われています」と具体例を明示。ピッチがより速く、ストライドがより大きくなれば、タイムは縮まると走りの構造から分かりやすく説いた。

 最初に50メートル走のタイムを測定。その後、伊藤氏は速く走る手段として正しい姿勢、腕振りなどが必要になるとし、ケンケンなどの練習を交えながら、走りのポイントを説明した。3つのグループに分け、参加者同士でもフォームをチェックし、意見を求め合いながら挑む表情は真剣そのもの。そして、締めくくりに行われたタイム測定では驚きの変化が出た。

 0.1秒から0.2秒縮んだ人が続出。なかには0.5秒短縮した人も。一緒に参加した裙本社長も6秒59から6秒50に縮め、充実の笑みをこぼした。最後はグループごとにフィードバック。それぞれ、撮影した走りの動画でビフォー・アフターを確認し、どこが変わり、なぜ速くなったのか、頭で理解し、活気に満ちた2時間を終えた。

 指導した伊藤氏は「伝える内容は普段、指導する小学生たちと変わりません。ただ、子供たちより深い情報を与え、グループを作り、動画を見ながら互いにアドバイスしながら、取り組んでいきました。皆さん、頭を使いながら1本1本、自分の走りがどうだったのか考えて修正し、取り組んでいたと思います」と労った。

伊藤友広氏が「セルソース」社員に走りを指導【写真:編集部】
伊藤友広氏が「セルソース」社員に走りを指導【写真:編集部】

セルソース・裙本社長がリレーに込めた「チームビルディング」の狙い

 全4回にわたる指導はこの日で2回目。最終的にリレーで全員がより速い走りを求めていく。裙本社長は企画を持ちかけた意図について「リレーに期待するのはチームビルディングです」と語る。「普段、仕事で接する機会がない人同士がチームを作り、コミュニケーションを取る。走りの映像を見たり、意見を交わしたり、新しいアプローチのビルディングができる」と説明した。

 スポーツは多岐にわたるが、なかでも「走り」の価値は大きいとみている。「サッカーなどの球技ではスキルに差が出てしまいます。しかし、走りなら速さはもとより、動作の改善の比率を競うことができます。弊社は社員60人。こうして走りを通して雰囲気のいい仕事につながり、活気のある職場を作っていきたいと思っています」と語った。

 指導する伊藤氏も裙本社長に同調し、走りに「2つの狙いがある」と明かす。「まずは今回の研修を経て、普段の運動習慣につながり、週1、2回でも走ってみようという意識につながってほしいという願いがあります。ただ、健康増進を目的にワイワイと楽しくやるだけで終わらせたくない」と言い、もう一つの狙いを説いた。

「今日も皆さんに説明しましたが、走りは『ピッチ×ストライド』から成り立つという全体の構造を理解し、速くしようと試みていました。それにより、自然と『PDCA(計画→実行→評価→改善)』を回し続けることにつながっていました。具体的に言えば、アドバイスを受け→動作をしてみる→まだ良くない→フィードバックを受け→次にこうしよう、というサイクルです。

 それは団体競技ではなく個人、しかも陸上特有のものであると思います。普段、我々は年間4万人の子供たちやトップアスリートを指導していますが、それはタイムを速くしたり、自信をつけさせたりという価値。それとは異なる角度からスポーツの価値を考え、再定義しています。走りを通じて『PDCA』が身に付くことは、健康と同時にビジネスに生きると感じています」

 走りの特性を、ビジネスに生かす。そんな狙いを持った異色の“大人のリレー研修”は、まだ始まったばかり。果たして、走りを通じて得た気づきは、どう仕事に生かされていくのか。最後に、笑顔で集合写真に納まった参加者たち。心機一転、また明日からビジネスの世界に戻る。

(THE ANSWER編集部)

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