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世界記録保持者は知っている 高木美帆、0.01秒を争う世界の「タイムと順位」の相関

世界記録と金メダル獲得は、全く別の挑戦だと高木美帆は語った【写真:荒川祐史】
世界記録と金メダル獲得は、全く別の挑戦だと高木美帆は語った【写真:荒川祐史】

世界記録と金メダル獲得は全く別の挑戦「ポイントが違うなと」

 氷上ではイメージ力を大切にしている。レース前には展開をひと通り思い描き、いいイメージを持ってリンクへ向かう。同時に、自分の身体と心の声にも耳を傾けながら、その時の必要に応じた準備を進めていく。

「多少の波はあるんでしょうけど、レース前に集中できないと感じることはあまりない。もし上手くできない時があれば、その時は『今、こういう状態だな』とありのままを受け入れて、その中で最善を尽くします。これができるようになったのも、ここ数年くらい。経験を重ねるうちに確立されていった感覚ですね。

 経験だけでいうと、中学時代から国際大会で滑らせていただいて、多分すごい本数のレースに出ていると思うんです。でも、自分で成長を感じられるようになったのは、自分でやりたいことを思い描き、強い意識を持ってレースに挑んだ後、その結果に対するフィードバックを繊細にするようになってから。イメージを持って臨んだ方が、レースを終えた時に得られる経験値も大きいと思います」

 狙い通りに世界記録を出した経験は、オリンピックや世界距離別選手権で狙う個人金メダル獲得に向けて自信となるのだろうか。実は、世界記録と金メダル獲得は、全く別の挑戦だという。

「タイムを縮める、記録を出すというのは自分との戦いなんですけど、レースに状態を合わせて相手選手に勝つというのは、またちょっと違うのかな。オリンピックや世界距離別選手権に必要なのは世界記録ではなくて、その日リンクに立った選手の中で一番速く滑ること。自分自身に勝ってタイムが伸びても、他の選手の方が速かったら、どうしようもない部分もある。だから、世界記録を狙いにいくのと、金メダルを狙いにいくのでは、戦略や気持ちの持っていき方のポイントが違うなと思いますね」

 タイムと順位の両立に必要なものは「絶妙なバランス」と笑った高木。来シーズン、2020年2月13日から始まる世界距離別選手権は米国・ソルトレイクシティーが舞台となる。世界新記録を打ち立てた高速リンクで、ひょっとしたら絶妙なバランスが完璧なバランスを見つけ出すことになるかもしれない。

(THE ANSWER編集部)

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