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ラグビーW杯24か国制の“罠” 3戦連続中5日、日程明らかに…日本に訪れる「超タフな7日間」の戦略

第1戦サモア→第2戦フランスは超タフな7日間に

 先ず、中5日での戦いが概ねどんなスケジュールで進められるかを確認しておこう。試合翌日は、通常コンディショニング優先のオフ、もしくはアクティブレストとなりプールセッションなど体を軽く動かす程度のメニューになる。次戦会場への移動日を差し引くと準備時間は3日間になるが、試合前日はリハーサル(キャプテンズラン)のため本格的な練習ではないと考えると、次戦への準備は実質2日しかないことになる。試合翌日の“オフ”に次戦会場の都市へ移動する“裏技”で3日の練習時間を捻出することは出来るが、選手にコンディション上の負担も掛かることになる。

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 この日程には、オーストラリア特有の地理的な難しさもある。前回この国でW杯が開催された2003年の経験を振り返ると、どうしても都市間の距離があるため飛行機での移動になり、ドア・トゥ・ドアで半日ないしそれ以上の時間が費やされることになった。27年の日本代表の試合日程を見ると、プール戦最長の移動になるのはフランス戦からアメリカ戦へ向けたブリスベン―アデレードの2000kmだ。札幌―鹿児島に匹敵する移動になる。

 西部パースでの試合ほどの遠距離ではなく、3試合が東部ベースの試合会場にまとまっているのはポジティブ材料と考えてもいいだろう。だが、エディー自身も「ブリスベン―アデレードは移動距離もある。この長距離移動に関しては準備が必要になると感じている」と指摘するように、移動の負担は考える必要があるだろう。チームにはチャーター機での移動などの選択肢もあるだろうが、大所帯でバスによるホテル―空港の繰り返しと気圧が変化する空路の移動は、どうしても時間と消耗というネガティブな影響はあるだろう。

 中5日で移動していく日程で勝敗に最も影響する可能性があるのは、やはり負傷した選手、体調を落とした選手の次戦へ向けた準備時間が不十分なことだ。昨秋のヨーロッパ遠征でも負傷者の数が目についた日本にとっては、選手のコンディショニングが重要な課題としてクローズアップされることになりそうだ。日本代表の対戦スケジュールを見ると、大会でもトップクラスのフィジカリティーを武器として、怪我や消耗のリスクのあるサモアと戦い、中5日でE組最強の相手フランスと相まみえる。プール戦の勝負どころとなる、かなりタフな7日間を強いられることになる。

 プール戦個々の試合に更に踏み込んで考えてみると、日本代表は具体的にどう戦うべきだろうか。会見に同席した永友洋司チームディレクター(TD)は「(開幕戦を)フランスとやれたらなとも思いました」と語っていたが、これは2015年大会の初戦で南アフリカを倒したことを踏まえての発言だ。最初に最強の相手に挑むことで、チームにとってはターゲットが明確化して、集中力を高めて準備を加速していける。対戦相手側を見ると、強豪であればある程、決勝トーナメントなどの先読みをしてしまうなど、日本戦にフォーカスし切れない要素もある。

 その一方で、フランスにとっては、2015年大会で南アフリカが躓いた“ミス”と同じ轍は踏まないはずだ。しかも日本は、22年シーズン以降4度戦い(日本の4敗)、今年7月にも対戦する相手だ。過去の4試合、そしておそらく今夏も名将ファビアン・ガルティエが指揮を執ることもあり、日本代表やエディーが、どう仕掛けてくるかは頭の中にインプットされているはずだ。日本代表は、エンジンが完全にかかり切っていない相手の足元を掬うようなゲームよりも、むしろ真っ向勝負でどこまで戦えるか、そして知将としても知られるエディーならではの、フランスチームに「いつもと違う」という不安感を与えるような心理戦も含めた揺さぶりをかけるゲームが必要だろう。

 カレンダー順にプール戦を見ていけば、初戦の相手サモアには2014年以降は5勝1敗と大幅に勝ち越し、現在2連勝中だ。先に触れたようにフィジカルが強みで、シンプルに真っ向勝負を仕掛けてくるのが伝統のスタイルだ。エディーは3日の会見で、「100%以下の状況で臨むことは有り得ない」と、この開幕戦をフルスロットルで戦う意気込みを明言したが、2つの理由で正解だろう。1つは、指揮官が指摘する通り、初戦から勝ちに行くことでチームを勢いづかせて、“短期決戦”となったプール戦を突破したいためだ。そしてもう一つは、プール戦3試合の中で、サモア戦こそが決勝トーナメント進出のキーになるからだ。

 チーム内では、W杯のような舞台で必要以上の勝ち星の計算は避けるべきものだが、プール戦では2位を確保出来れば決勝トーナメント進出がほぼ決まる。割り切って考えれば、日本はE組最強と目されるフランスに敗れても、残るサモア、アメリカに勝てばプール戦勝ち抜けが確定する公算だ。

 日本に初戦でサモアを倒す実力があれば、フランスに敗れたとしても最終戦でアメリカに勝つのは難しいことではない。2月9日現在の世界ランクでアメリカは16位。サモアの20位よりランキングでは上だが、日本は昨年の対戦まで4連勝中と優位に立つ。サモアとアメリカの力関係でも、過去の実績、選手個々のフィジカルや経験値、スキルなどを踏まえても、多くの面でサモアの実力が上なのは20か月後も大きく変わらないだろう。

 このような観点でプール戦を考えると、エディーが明言したサモア戦必勝は戦略的に重要な意味を持つ。大袈裟にいえば、サモア戦勝利がプール戦における最重要ポイントと考えて準備を進めていいだろう。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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