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日本に2度目のラグビーW杯はやって来るのか どうなる2035年招致…求められる大義、ライバルはどこか

会見で開催への意欲と自信を印象付けた(左から)岩渕健輔専務理事、土田雅人会長、山神孝志CEOの協会首脳陣【写真:吉田宏】
会見で開催への意欲と自信を印象付けた(左から)岩渕健輔専務理事、土田雅人会長、山神孝志CEOの協会首脳陣【写真:吉田宏】

大会招致と成功に求められる「理念」と「収益性」

 ノーサイドという言葉は使わなくても、世界中のラグビー選手、関係者が、試合が終われば敵味方の隔たりなく互いを労い、尊重し合うのは当たり前のことだ。まずは、まだ概要も大会自体の規模も決まっていない2035年の開催に手を挙げたスタート時点の理念としては良しとする一方で、世界に対してなぜ日本なのか、日本で開催する意義を、さらに強く発信していく必要があるだろう。

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 2019年への招致活動を振り返れば、「アジアで初」「主要国以外で初」というストレートで強いメッセージと開催意義があった。15年大会までW杯は世界の主要8か国だけで回している状態だった。そこにWR側のさらなる世界的な普及の必要性がマッチしたこと、そして大会毎に膨らむ運営費や、WRが受け取る大会保証料、いわゆる“上納金”を安定的に確保するために、日本への期待が相まって実現した大会だった。そんな当時の理念に匹敵する訴求材料を、さらにどう構築するかが問われることになる。

 会見では、この訴求材料について質問したが、岩渕専務理事はこう説明している。

「2035年の大会に向けては、やはりW杯そのものが持つものだけではなく、ラグビーそのものをどうやって世界の中で広めていけるかということだと思います。その意味では、日本が持っているユニークさというのは世界でも例のないものだと思うので、そのユニークさをしっかりと打ち出すことが重要だと思っています。世界に向けての更なるメッセージというのは、今回のメッセージ同様に打ち出していく必要があると思っています」

 W杯招致活動を長らく取材する中で、大会を招致し、成功するためには2つの車輪が必要だと感じている。一つは「理念」であり、もう一つはファイナンス、つまり「収益性」だ。会見で土田会長が訴えたのはまさしく理念の部分だ。収益面は、まだまだここからWRとの協議の中で具体性を持たせながら組み上げていくものだろう。

 この収益性については、主に2つの柱で考えられる。一つは主催団体、つまりW杯ホスト国がWRへ収める上納金と、ホスト国の収益だ。上納金と書くと何やら怪しいもののような印象だが、この収益がWRにとって世界規模で展開する普及活動や、日本も参戦するパシフィックネーションズカップのような主催大会などの活動資金として使われる。つまり、W杯での収益で向こう4年間の事業資金を調達しているのがWRの台所事情だ。19年の日本大会では、WRは上納金135億円に加えて大会スポンサー料や放映権料なども得ている。また、日本側には60億円程度の収益があった。

 この巨額な収益を集められる国・地域が、大会を追う毎に減少しているという現実は、オリンピックやFIFA(サッカー)W杯でも共通する傾向でもある。ニュージーランドが2011年W杯を開催した時も、関係者の中で「この国では最後の開催」と言われたのも、同国内で、WRが求めるほどの資金を捻出することが相当困難だという背景があったからだ。いまや世界規模の巨大スポーツイベントは、大きな資本を持つ国、資本が流れ込む国でしか開催が容易ではない。

 収益性から考えると、19年の実績も踏まえて日本の2度目の開催はWR側からも期待を持たれる要素は十分にある。日本の場合は、上納金の調達などでも、政府による支援に加えて企業側からの拠出に助けられての開催実現だったが、次回開催へ向けてもWRから日本の“企業パワー”への期待は小さくないはずだ。

 交通、宿泊などのインフラストラクチャーでも、日本は19年大会で実績がある。岩渕専務理事も「日本のアドバンテージとしては、2019年にあのような大会が出来たことは非常に前向きな、大きな武器になっている」と自信を見せる。スタジアムの整備、利便性といった会場のインフラは若干の課題はありそうだが、環境面、設備面に対するWRの評価は高いはずだ。

 加えて同専務理事は「大きなことは、その国(開催国)がW杯の後に、どのような光景になっているかというのは非常に重要なポイントだと思っています。その意味で19年のW杯が終わってから、大学選手権決勝であれだけ多くの方(4万3489人)が試合をご覧いただけたこと、様々なカテゴリーの大会で多くのお客様に観ていただいていることも、他の国にはあまり見られないユニークなことなので、日本には大きなアドバンテージだと思います」と、大会後のラグビー普及も訴求材料に挙げる。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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