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ラグビー界に衝撃が走った譲渡劇 激動4か月の内幕、候補8社から「NEC→JR東日本」はこうして決まった

難しい黒字経営「どこまで活動資金を持てるかが力関係にも影響している傾向」

「リーグワンが発足して、基本的には企業、プロというハイブリッドで進めてきています。でも経営的には黒字は難しいのが現状です。親会社、母体企業からの協力、支援は欠かせない。その一方で事業化を進めなくてはいけないとなると、何に価値を見出していくのかをよく考えていかないと、大きなテーマでもある持続可能な事業にはならない。各チームを見ていても、どこまで活動資金を持てるかが力関係にも影響している傾向は感じています。

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 そうなると“持っているチーム”と“持っていないチーム”の格差も広がっていくことになるが、それが今回の我々のようなケースに繋がる恐れもある。人件費が15億円でも20億円でもいいですが、その中でサラリーキャップのような上限を定めてマネーゲームが過熱し過ぎない方策を考える必要はあると思います。日本のラグビーより遥かにプロ化が確立されているアメリカの4大スポーツでもドラフトでは戦力均衡という思想があるわけじゃないですか。そういう面でのガバナンスやビジョンを、状況に即して設ける必要はあるでしょう」

 リーグワンが様々な議論の中で、現行の形で運営されることになったのは理解出来る。だが、5シーズン目を迎えた中で生じる、リーグ側、チーム側の課題を考えると、スタート当時のロードマップや規約に柔軟性を持たせることも必要だろう。リーグ側でも4年を1単位にした「フェーズ制」という区切りを設け、フェーズ毎に、より実情に即した運営方針や規約の修正を加えている。

 だが、リーグ自体の事業化という大きな挑戦を見れば、思い描いたような前進が出来ていない現実もある。進まない中で、今回のようなチームを手離す企業も出てくれば、リーグワン自体の存在意義も議論が起こり兼ねない。健全なリーグおよびチーム運営への取り組みを怠っているとは思わないが、取り組む中でも、全国制覇も成し遂げたチームが看板を下ろす事態が起きている現実は1チームの不運や悲劇と受け止めるべきではないだろう。

 チームにとっては移譲先の決定で大きなハードルを乗り越えたことになるが、今シーズン終了後へ向けて太田GMの仕事は多忙を極めそうだ。先ずは現状のGMポストの今後については、こんな思いを語っている。

「来季の新体制では、GMという役割はまだ全く白紙の状態です。どのような体制でチームを進めていくかはJR東日本さんの判断ですから。現状では、社内で準備室のような環境を作って進めていくことになると思いますので、そこで検討ということになるでしょう。もし私に引き続きやれということであれば、基本的には続けていきたいという思いはあります」

 GM続投の意思には、直ぐにでも取り組む課題があることも背景にある。

「リーグワンには“120日ルール”というものがある。選手の移籍交渉についての期日です。リーグ終了の120日前から、移籍希望の選手に対しては、他チームが交渉できるというものです。その期日が今季は2月の第1週なのです。そこまでにチーム、選手双方が来季の契約について話し合う必要がある。JR東日本さんの場合、レールウェイズ(トップイーストC)というチームは保有していますが、リーグワンの規約はこれまで関係ないものでした。

 なので、先ずこの120日ルールについて話し合い、来季の選手契約についても詰めていく必要がある。今回のチーム移譲に伴い、リーグ側でも特別措置も検討されていますが、まず誰とどんな契約をして、契約しないかを判断した上で、選手側にも移籍希望の有無がある。なので個別に面談して意思確認する必要があるのです。早急に手を打たないといけないのは、その意思確認の場で雇用側から提示するべき条件を作ることです」

 シーズン最中で選手は毎週末の試合に集中する一方で、負傷やコンディショニングの必要が浮上する。その中でGMとして企業側との話し合いも進め、移籍や新たな契約では双方の間に立つことになる。おそらく新体制へと移行するシーズン後までマネジメント分野の作業が続くことになるだろう。選手との契約については、先ずは受け入れ先のJR東日本の判断が前提となるが、12日の会見でJR東日本の喜㔟社長は、現状のプロ選手、社員選手などの待遇には柔軟性を持たせると説明している。社員選手についてはJR側への出向など様々な雇用形態が考えられるが、1月初頭の時点ではまだ社内での検討段階だ。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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