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ラグビー日本一3度の名門、消滅危機 「中学まで帰宅部で…」12年一筋の社員戦士が燃やした愛、恩、繋がり

インタビューで思いを語った大和田【写真:吉田宏】
インタビューで思いを語った大和田【写真:吉田宏】

覚悟した「これで引退かな」…社員選手としての自負

 ラガッツはかろうじてチームを存続させ再び強化を進めているが、グリーンロケッツの場合はNECがチームを手離すことになってしまった。大和田が振り返ったようにチーム側も2022-23年シーズンでのディビジョン1陥落から2シーズン昇格に失敗するなど結果を出せず、移譲を食い止められなかったが、リーグ、ラグビー協会側をみるとラガッツも含めた過去の苦い事例をどこまで学びに繋げることが出来ているのかは疑問だ。いかにセコム、NECのようなケースを今後生み出さないかは、個々のチームだけではなくリーグ、協会が真剣に考える宿題でもある。幸いなことにリーグワンチームの母体企業は国内有数の会社ばかりだが、ネクスト・グリーンロケッツは必ず出て来るだろう。

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 譲渡話が浮上した時点で、大和田はラグビーを続けることについては、こんな思いに駆られていたという。

「正直プロ選手なら移籍などで現役を続けられる可能性も高いなと思っていました。でも僕の場合は社員選手です。社業もしてラグビーもやる。この両面で会社に貢献したいという気持ちでやって来た。なので、譲渡話は、自分のような選手だとラグビーをやれる環境がなくなってしまうと感じたし、これで引退かな、みたいなことも考えていました。ラグビーを本当に続けたいならプロでやるのがいいと思いますが、僕は社業も両立してやりたいと決めてNECに入って来たので、自分のようなプレーヤーは、もうここでラグビーは終わりだなという感覚はありました」

 大和田の職場は、本社から出向しているNECプラットフォームズの生産管理部だ。業務内容はホテル向けなどの多機能電話機など通信機器の海外工場への発注依頼や営業先との取引だという。

「普通の社員と同じように朝職場に行ったり、練習の時間だけ抜け出して後で戻って仕事をしたりしています。基本的には練習がメーンですが、曜日によってお昼までやってから出社もしています。僕の場合はテレワークで出来る業務もあるので、今日もそうですが、場合によってはここ(クラブハウス)で仕事することもあります。海外との取引などもあるので、時間によっては練習の合間にすこし仕事をしたりもしています」

 既に管理職目前の主任を務めながら、トップレベルのラグビーにも取り組んできたという社員選手としての自負がある。だからこそ、チーム移譲後も仕事を続けながらラグビーにも挑戦したいというこだわりも強い。リーグ側では、段階的に選手の契約形態には柔軟性を持たせてきた。そのため、一つの企業で働きながら別の企業を母体とするクラブでプレーする選手、スタッフも出てきているが、大和田はこんな思いを語ってくれた。

「正直、そこまでは考えていませんでした。自分も年齢を重ねてきて、業務でもある程度任されるようになってきています。その一方で職場は練習グラウンドに近いので、配慮していただいているとも感じています。なので、違うチームでプレーすることは全然考えなかった」

 大学屈指の強豪・帝京大学で主力として活躍した大和田だったが、学生時代に進路についてはプロ契約という選択肢は考えてなかった。

「大学3、4年の頃はラグビーを続けられればいいなという気持ちでした。当時はまだプロ契約もあまり多くはなかったですから。帝京でも出られない時期もあったので、正直な気持ちではラグビーチームを持つ企業に就職出来ればいいくらいに考えていた。場合によっては、チームのない企業で仕事に専念する選択肢もあった」

 実際には複数チームが獲得に関心を持ち“相思相愛”のNECに就職したが、この控え目な自己評価が大和田のキャラクターを物語る。同世代で帝京大の黄金時代を支え、先日、今季限りでの現役引退を表明した日本代表CTB中村亮土(東京サントリーサンゴリアス)は実績を積む中で契約をプロに変更したが、大和田は社員としての挑戦を貫いてきた。

「入社してからの職場の人たちが本当にいい人ばかりで、すごく熱心に応援してくれたんです。なのでラグビー部には会社の福利厚生だったり、社員の機運醸成や意欲の向上という役割が確かにあったと思います。業務でも職場の皆さんにサポートしていただいたのですごく恩を感じていた。だからラグビーだけじゃなくて、会社にもしっかりと貢献して、様々な職場の人たちに恩返ししたいという気持ちは毎年強くなっています」

 ラガーマン、企業人としてNECへの恩を感じ、貢献したいという大和田だが、その繋がりは高校1年生まで遡る。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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