ラグビー界に衝撃 W杯まで1年…「王国ニュージーランドHC解任」異例人事のなぜ 後任は前日本代表HCか
後任にジェイミー・ジョセフ浮上 キーファクターは“右腕”の存在
では、後任HCはどうなるのだろうか。現地で最右翼と報じられるのはハイランダーズHCで、23年まで日本代表を指揮したジェイミー・ジョセフだ。昨秋にはオールブラックスの予備軍「ニュージーランドXV(フィフティーン)」のHCに就任するなど、代表チームに近いポストにも就いている。おそらくは、ジェイミーを軸として人選が進む見通しではあるが、日本でも長らく取材をしてきた経験からは、オールブラックスHCとしての成功には“但し書き”が必要だと考えられる。それは、ハイランダーズ、日本代表でもジェイミーの右腕として手腕を発揮してきたトニー・ブラウンの存在だ。
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2019年までの日本代表では、アタックコーチとして世界でも類を見ない精緻な攻撃を組み上げ、史上初のベスト8進出に貢献した。現在は、南アフリカ代表ACとして、パワフルなチームに洗練された攻撃ラインを落とし込んでいる。南アフリカ代表もライバルNZから招いたほど高い評価をしているため、ジェイミーとの共闘は未知数だが、この懐刀の人事が譲れないキーファクターになるだろう。
HC自身の手腕でオールブラックスをステップアップ出来る期待感があるのは、現在オーストラリア代表HCを務めるジョー・シュミットだろう。選手としては代表レベルの経験がなく、高校の英文学教師からコーチとして実績を積んできた異色の経歴を持つが、その手腕は目を見張る。アイルランド代表HC時代は史上初めて南アフリカを破り、世界ランキング1位にも初めて立つなど、チームを世界トップクラスに鍛え上げた。代表以外でも、フランス・ASMクレルモン・オーヴェルニュ、アイルランド・レンスターなど指導したクラブでもチームを優勝に導いてきた。現職の任期が今夏に始まるネーションズチャンピオンシップまで残されていること、退任理由として家族の体調面なども挙げているためのハードルはあるが、洗練されたアタックなどの手腕は、世界屈指のコーチと評価していいだろう。
他にも、スーパーラグビー・チーフスで実績を残すクレイトン・マクミランなどの名も挙がるが、一部報道では日本代表エディー・ジョーンズHCの名も浮上するなど、ここまでくるとどこまで本気で考えているのか疑問を感じざるを得ない。NZ代表は過去に同国人しか指揮をしていないため、元ウェールズ代表HCウォーレン・ガットランド、スコットランド、フィジー代表を率いたヴァーン・コッター、NZ代表HC経験もあるジョン・ミッチェルや、日本で成功を収めるBL東京HCトッド・ブラックアダー、埼玉パナソニックワイルドナイツHCを退任したばかりのロビー・ディーンズ、コベルコ神戸スティーラーズを率いるデイブ・レニーHCらも候補資格はあるが、移籍交渉のハードルや、限られた強化時間で求められる結果を達成する手腕は期待できない。
やはり有力なのはジェイミーとシュミットとなるが、指摘したように前者はトニー・ブラウンの入閣の可否が成功の鍵を握り、後者は家族や就任時期というハードルがある。共に条件面でどこまで詰められるかがポイントになるだろう。
いずれにせよ、次期HCは就任から1年あまりの活動時間でW杯を迎え、この国の指揮官である限りは優勝のみを求められることになる。昨年12月のW杯組み合わせ抽選会で、チームは開催国オーストラリア、チリ、香港とプールAで戦うことが決まっている。決勝トーナメント進出が確定する上位2チーム入りは間違いないが、万が一2位通過になれば1回戦で日本代表とベスト8進出を賭けて戦う可能性もある。太平洋を挟んだ対岸の火事ではないのだ。
W杯へのカウントダウンが始まる中での“王国”での大鉈が、吉と出るか凶と出るのか。覇権の行方も左右しかねない人事を世界が固唾を呑んで見守っている。
(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)
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