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ラグビー界に衝撃 W杯まで1年…「王国ニュージーランドHC解任」異例人事のなぜ 後任は前日本代表HCか

「世界最強」奪還は未知数 危惧されるW杯までの強化時間

 NZRは、ロバートソンHCの退任を発表するのに合わせて後任人事を進めることも表明している。だが、今回の解任劇がチームの飛躍的な進化、最強時代の再来に繋がるのかは未知数だ。オールブラックスは2015年大会を最後にW杯優勝から遠ざかる。23年大会決勝では、疑惑の判定などにも祟られながら南アフリカと11-12と白熱の戦いも演じたが、王座を追われてからの趨勢は、現在のランキング通り南アフリカを追い続ける位置に立たされる。

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 いまだに世界トップレベルの強さを誇りながら「世界最強」という称号はW杯連覇を続ける南アフリカに明け渡しているのが現実だ。NZのラグビー関係者、ファンから見れば、世界2位でも「低迷」と捉えられているが、これが全てコーチ陣の問題と考えるべきではないだろう。NZは、代表選考の独自ルールとして国内チームに所属する選手のみを選考対象にしている。つまり海外のチームでプレーしている選手は代表に選ばれないのが原則だ。この厳しいルールが代表選考にマイナスに働いてきたという指摘は、これまでもされてきた。

 象徴的な一例が、現在東芝ブレイブルーパス東京で活躍するSOリッチー・モウンガだ。誰もが認める世界屈指の司令塔には、NZでも熱烈な代表復帰へのラブコールが続いてきた。モウンガは今季のリーグワン終了後に母国へ戻り、27年W杯へ向けた準備に入る見通しだが、他にも多くのオールブラックスが日本も含めた海外でのプレーを選び、代表入りを諦めている。

 オールブラックスが“鎖国”のような価値観で代表選考を続けてきたのと対照的なのは、宿敵・南アフリカだ。NZを倒した23年W杯決勝のメンバーを眺めると、先発15人中9人が海外クラブに所属していた。日本でもCTBジェシー・クリエル(横浜キヤノンイーグルス)、FLピーターステフ・デュトイ(トヨタヴェルブリッツ)ら多くの南アフリカ代表がプレーしている。オールブラックスの厳しい選考規定にも、選手の海外流失の抑制など正当な理由もあるが、現状の代表チームの力関係も踏まえれば、選手、関係者からも懐疑的な声が上がるのも無理はない。少なくとも、現行ルールに柔軟性を持たせる議論は必要だろう。

 ロバートソンHCの前任だったフォスター氏も、2022年のチーム低迷で厳しい批判に晒されている。今回の解任劇に一定の正当性があったとしても、もしオールブラックスが「世界最強」の座を取り戻せていない理由を、コーチの手腕だけに負わせてしまえば、強化環境の構築が進まない恐れがある。ラグビー王国復権には、選手選考の規約見直しが必要だろう。

 同時に危惧されるのは、残り2年を切ったW杯オーストラリア大会へ向けた強化時間だ。指摘した選手の海外流出はあるものの、選手層を見ればNZほど潤沢な“資産”を持つ国はない。残された時間での強化も他国よりは深刻ではないかもしれないが、新体制がどんなスタートを切るのか、そして昨秋も圧倒的な強さをみせた南アフリカをW杯でどう倒すのかを考えれば、やはり2シーズンにも満たない時間との戦いは強いられるだろう。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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