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日本の「お茶当番」と何が違う? 米国の運動部を支える“保護者の負担”の実情

実質的負担は日本と同等も…当番制ではないからプレッシャーは少ない

 次男の運動部の場合は、上級生の保護者がボランティアをまとめる係を買って出てくれている。まとめ係から試合のスケジュールとボランティアのタスク一覧がメールで送られてくる。例えば、〇日の〇校戦、売店2人、スコア2人、アナウンス1人 ×日の×校戦、売店3人、スコア2人、アナウンス1人などと書かれていた一覧表をイメージしてもらうとわかりやすいと思う。自分の都合の良い日、自分のやりたいタスクのところに、名前を入れていく方式だ。どうしても忙しくて参加できない、時間があってもやりたくないならば、名前を入れなければよい。

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 どのくらいの運動部がこの方式を採用しているのかは分からない。しかし、タスクに名前を書き入れたり、変更したりできるアプリやソフトウェアがたくさん出回っている。近所の障害児野球のボランティアもカレンダーに自分の名前を書き込んでいくシステム。余談だが、私の子どもたちが小学生だった時には、交通安全ボランティアの振り分けにもこのようなアプリが使われていた。また、一品持ち寄りのパーティーでも同様のアプリを使う。ちなみに紙皿や紙コップを持っていく仕事は手軽なので、すぐに名前が入る。このやり方の普及率は知らないが、米国ではそれなりに浸透しているのではないかと思う。

 では、引き受ける人がなければ、どうなるのか。「〇日の試合のアナウンス係が空欄になっています、どなたかたいらっしゃいませんか」というメールがまわってくる。本当になり手がいない場合は、役割が空いたまま試合を行うしかない。それでも、たいていの場合は、誰もいないのなら、と最後の最後になって誰かが手を挙げる。

 当番制ではないから、決められた日にちに、割り当てられた仕事をきっちりしなければいけないという重圧はない。自分の都合がよい日に、できる仕事、やりたい仕事を引き受ける。やるか、やらないかの選択権は自分にある。だから、役割を引き受けた時には、周囲から「引き受けてくれてありがとう」という感謝とねぎらいがある。当番を引き受けない保護者がいたらモメるだろうが、米国の場合は、試合運営のボランティアを引き受けない人がいても、それほどこじれることはない。(「何もしないのに、文句ばかり言ってくる人がいる」と耳にしたことはある)

 米国でも、子どもがスポーツしようとすれば、保護者の負担は小さくない。実質的な負担量は日本とそう変わらないと思う。前述したように当番制ではないので、決められた仕事をこなさなければというプレッシャーは少ない。自動車による送迎は、個人間でお願いしたり、されたりして、都合をつけている。大きな言葉を使うと「贈与」と「返礼」ということだろうか。役割を引き受ける人がいなければ、そのポジションは空いたままになっても仕方がないという大雑把なところもあり、緩やかなつながりで、運営がなされているように見受ける。

 ボランティアで保護者がコーチをすることの負担は大きいが、これは別の機会にレポートしたい。

(谷口 輝世子 / Kiyoko Taniguchi)

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谷口 輝世子

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情を深く取材。近著に『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのか――米国発スポーツ・ペアレンティングのすすめ』(生活書院)ほか、『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)『子どもがひとりで遊べない国、アメリカ』(生活書院)。分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店)。

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