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単位不足で「卒業できないとなると…」 ラグビー日本代表、大学生招集で抱える強化整備のジレンマ

インタビューに応じた永友洋司TD、大学生年代の遠征招集の課題と向き合っている【写真:吉田宏】
インタビューに応じた永友洋司TD、大学生年代の遠征招集の課題と向き合っている【写真:吉田宏】

長期遠征で大学生招集に課題「本当にデリケートな問題でもあるのです」

 このような若手育成も含めた強化体制の整備、拡充の必要性を認めた上で、永友TDは大学生世代の強化環境についても言及している。

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「今はラグビーと学業の両立が重要になっています。代表に大学生を招集する時にもネックになるのですが、やはり大学(講義)には行かなければいけないですから。今回の矢崎(由高、早稲田大3年FB)君のケースでは、早稲田大学とラグビー部の理解を得られたが、遠征でずっといなくなると、やはり本人にかかるリスクが相当大きくなってくる。単位取得などの問題で卒業出来ないということになると、出身高校にも影響が出てくる問題です。日本はそういうシステムになっているので、本当にデリケートな問題でもあるのです」

 個々の制度で違いはあるものの、日本の大学におけるスポーツ推薦は選手が入学後にしっかりと講義を受けているか、卒業に必要な単位を履修しているかという学業成績が、その後の出身校からの推薦枠等にも影響する。同時に、ラグビー部でも選手の学業成績等で推薦枠が増減されるというケースもある。永友TDが語ったように、このような難しさは代表チームの選手招集にも影響が及んでいる。個々の選手については代表(協会)、大学側で協議、調整をしていくしかないが、TDとしては大学生世代の強化・育成にはリーグワン及び参入チームとの連携も視野に入れている。

「JTSのような環境の中では、選手の能力をグッと上げられます。でも、大学チームに戻ると、部員もすごく多い環境になるので選手個々の強化にバラつきが起きてしまう。大学4年生は、シーズンが終わればアーリーエントリーでリーグワンチームに参加して鍛える環境があります。そのためU20以降の大学1、2、3年生の代表予備軍の選手たちに、いかにいい環境を用意出来るかが重要だと思います。そこついては、いままさしくリーグワンがいろいろな面で働きかけをしています。大学のオフ期間などにリーグワンチームに参加するようなプログラムです」

 2012年からの第1期体制の時にエディーとの懇親の席で、こんな話をした。当時のトップリーグチームが1週間に1回程度で大学生を招いて合同練習を行い、トップレベルの選手、チームから技術、体作りや栄養補給、そして練習に臨むアティチュード(取り組む姿勢)を体感する環境を作るべきだという内容だったが、永友TDの視点には、当時は全く実現しなかった環境作りの可能性を感じさせる。

「リーグワンと連携しながら(大学生を)チームで一緒に練習させてもらう。それは大学が終わってから行ける環境も作れると思います。今すぐに出来るかは難しいかも知れないが、リーグワンでもそれを考え始めています。そのような環境が整っていくと、単発的な強化ではなく継続的な強化が出来るのではないかと考えています」

 インタビューの中では、永友TDが選手へ向けて謝罪を口にした場面があった。

「秋のテストシリーズで選手に申し訳なかったなと思うのは、アタックコーチがキャンペーンの頭から不在になったことです。いろいろな面で迷惑をかけてしまった。そこは、ここからの2年の課題でもあります」

 8、9月に行われたパシフィックネーションズカップ(PNC)までアタック担当のコーチを務めたダン・ボーデンACが退任。秋のシリーズは、後任を招集出来ないまま戦い続けた。結果的にアタックを強みに掲げてきたチームが、秋は1試合平均16得点だったことを考えればアタック面で物足りなさがあったのは否めない。ディフェンス担当のACも昨年のデイヴィッド・キッドウェルが1シーズンで退任して、今秋ゴールド氏に変わっている。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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