単位不足で「卒業できないとなると…」 ラグビー日本代表、大学生招集で抱える強化整備のジレンマ
ラグビーワールドカップ(W杯)オーストラリア大会まで2年を切る中で、日本代表の永友洋司チームディレクター(TD)の視点から見る強化の道程と可能性、課題を聞く単独インタビュー。後編は、強化環境の整備、そして若手育成の環境整備など、マネジメントのトップとしての課題や取り組みを中心に話を聞いた。(取材・文=吉田 宏)

日本代表の永友洋司TDインタビュー後編
ラグビーワールドカップ(W杯)オーストラリア大会まで2年を切る中で、日本代表の永友洋司チームディレクター(TD)の視点から見る強化の道程と可能性、課題を聞く単独インタビュー。後編は、強化環境の整備、そして若手育成の環境整備など、マネジメントのトップとしての課題や取り組みを中心に話を聞いた。(取材・文=吉田 宏)
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日本代表TDというポストの大きなミッションは、日本代表の運営、強化をマネジメント側から支えることだ。同時に、日本協会(JRFU)が代表チームに求めるものを代弁するのも重要な仕事になる。そんなミッションを担う中で、永友TDはW杯までの残された2年で何を重視し、注視していくのだろうか。
「これまでの繰り返しになりますが、日本代表が目指すラグビーは、ここまで取り組んできた方法だと思っています。やはり日本人の持つ特性を含めて、南アフリカやニュージーランドのようなラグビーではない。どこで自分たちが勝機を見つけ出すかと考えると、いま目指しているものが非常に大事だと思う。後はそれをどうやって実現して、伸ばしていくかという方法の部分だと思います。そこをテストマッチに入るまでに、どこまで完成度を高められるかでしょう。ネーションズチャンピオンシップも始まりますが、試合になって何かをやるのではなく、それまでにどれだけ準備出来るかが大事なので、そこをしっかりと見ていきたい」
ゲームまでの環境整備は、まさにTDが責任を担うものだろう。そんなマネジメントの中で、この2シーズンの日本代表の取り組みの中で感じるのは、選手育成の在り方だ。現状では、エディーが若手選手の育成まで陣頭指揮を執っているが、個人的には、本来はトップチーム(正代表)の強化が大きなミッションであるはずの代表HCへの負担が多すぎるという印象を持っている。HCがどこまでの役割を担うかについて、永友TDはこう説明している。
「協会側とも話し合っているのは、エディーにどれだけ代表強化に集中してもらえる環境を作れるかということです。この2年やってきて、代表活動のない時間にJTS(ジャパン・タレント・スコッド)などにも取り組んでいますが、ジャパンフィフティーン(準日本代表)などと活動が重なってくると、代表コーチ陣が同時進行で見ている状況です。なので、若手の活動を例えば他のコーチに任せて、2つのチームを動かしながら、選手を(正代表へ)上げていくやり方も話し合っているところです」
代表関連のコラムで過去に何度も指摘してきたことだが、2023年W杯までの強化が、トップチーム(正代表)が勝つことに注力されてきた中で、次の世代の育成が不十分だったことが、現在の世代交代の苦戦にも影響している。2020年に拡大したパンデミックの影響でユースレベルの強化が制限されたことが数年後に響いているのは否めないが、協会として、そのような状況下でどこまで若手育成のチャレンジをしてきたかという点では疑問が残る。そんな背景を踏まえながら現在の取り組みを見ると、結果的には、やはり代表HCに“丸投げ”の印象もある。
代表予備軍クラスの選手を集めたJTSや、永友TD同様にエディーともサントリー時代から親交のある大久保直弥HCにU20日本代表を任せるなど、JRFUでも丸投げにならないための組織的な環境作りを進めている。だが、JTSをみると実際にはエディーが取り仕切っている状況だ。取材する身で第三者として日本代表を中心としたこれらの取り組みを見ても、代表を勝たせることが職務のエディーが受け持つ範囲が広がり過ぎていると感じざるを得ない。確かに、23年W杯後のHC選定過程の中で「若手育成」も大きな条件であり、それをエディーも受け入れたという経緯はある。だが、現状を野球の試合に例えれば、ショートを守るエディーがセカンドも受け持っているような印象だ。平凡なセカンドゴロでも、エディー1人の守備では簡単にヒットにされてしまっているように感じてならない。
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